麻倉怜士のハイレゾ

 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。1月ぶんの優秀録音をお届けしています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band[Deluxe Anniversary Edition]』
ザ・ビートルズ

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 昨年リリースの50周年2枚組CD(UICY-15600/1)と同内容のリミックス/リマスターバージョンがハイレゾで登場。スーパーデラックス版同梱のBDオーディオとは15曲が共通している。昨年のリリース時には、2009年リマスターと2017年版の違いを比較するイベントをしたが、確かにもの凄く違う。低音の量感の雄大さと解像感の高さ、ヴォーカルのメインのフューチャー感、コーラスのハーモニーの明瞭さ、楽器の音色、その輪郭、進行感の明確さ……など、現代感覚を入れてリミックスすると、ここまでの違いが出るのかと、今回も驚いた。

 オリジナルのビートルズ音源は「素材」である。今後、DSDやMQAが出る可能性は高い。また違った音になるのが楽しみだ。タイトルのSgt. Pepper'sアルバム曲の本番とテイク違いだけでなく、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」「ペニー・レイン」のテイク違いの音源が収録されているのも、お得だ。今度、四月から早稲田大学エクステンションセンターで、ビートルズの研究講座を始めるが、そこではミックス、マスタリングの違いも分析しようと思っている。

FLAC:96kHz/24bit
Universal Music、e-onkyo music

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ オリジナル・サウンドトラック』
JOHN WILLIAMS

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 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のジョン・ウィリアムズの作曲・指揮によるオリジナル・サウンドトラック。ハイレゾで聴く「スターウォーズ・テーマ」は感動的だ。ジョン・ウイリアムスのわくわくさせる曲の威力に加え、最新録音のハイレゾ再生だから、始めから昂奮は約束されているようなもの。

 冒頭のテーマは、オーケストラのスケール感、低音の分厚さ、全体の塊感の響き、そしてデジタル的なメタリック感もすべてがスターウォーズの一部なのだと、ハイレゾでは実感が強い。映画と離れても、単体で鑑賞に値するハイレゾ作品。

FLAC:192kHz/24bit、96kHz/24bit
WAV:192kHz/24bit、96kHz/24bit
WALT DISNEY RECORDS、e-onkyo music

『Bach: Goldberg Variations, BWV 988』
Ji

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 「Ji(ジ)」は韓国生まれ、アメリカで学んだピアニスト。ゴールドベルグ変奏曲は天下のグルード演奏が睥睨しており、その後のピアニストはいかにグールドと異なる個性を訴えるかに腐心してきたが、韓国の新進ピアニストJiのデビュー盤は、バロック的な即興感を表に打ち出した。

 第2変奏の冒頭は、レガートで個々の音を立てずにフレーズ単位で歌わせるが、リフレインでは、がらっと変わり、冒頭の音にスフォルツァドし、即興的なフレーズも闊達に入る。その後のバリエーションの進行とともに、即興的な感興を加えていく。その意味では先が読めない面白さがある。ジャズ的なシンコペーションも随所に入る。意外性に打たれる演奏だ。音は打鍵を鮮明に粒だてるのではなく、響きを大切にしたサウンド。 2017年8月、ボストン、フレーザー・パフォーマンス・スタジオで録音。

FLAC:44.1kHz/24bit
Warner Classics、e-onkyo music

『ショスタコーヴィチ:交響曲第10番』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ヘルベルト・フォン・カラヤン

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 カラヤンのショスタコーヴィチはこの交響曲第10番のみだ。しかも複数回、録音している。1969年、カラヤンとベルリン・フィルが訪れたモスクワ音楽院大ホールでの伝説のライヴ録音はメロディアレーベルからリリースされている。

 当日、会場にいたショスタコーヴィチが終演後、壇上でカラヤンと並び立ったという有名なエピソードも。本ハイレゾは1966年11月18、30日、ベルリン、イエス・キリスト教会で録音。

 実に重厚で豪壮、大器量のショスタコビッチだ。第2楽章Allegroは疾走感、切れ味、シャープネスがスコアの特徴だが、カラヤンは、まさに自家薬篭中のカラヤン節。重く、分厚く、メカニカルで無機的な響きをベルリン・フィルから引き出している。アナログ的な重層感、弦の燦めき感、金管の金属感などのリアリティは、DSD2.8MHzならではの音楽的な表現力だ。最近の演奏ではネルソンス・ボストン交響楽団の繊細にして軽快で鮮鋭な名演とは対照的。重いのだが、駆動力抜群の"カラヤン力"が魅力だ。

DSF:2.8MHz/1bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music

『WADASOUL COVERS ~Award Songs Collection』
和田アキ子

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 グラミー受賞曲のカバー集。冒頭から、凄いボリューム感のバスドラムに驚かせられる。コンスタントに刻まれる強力ビートに乗って、ソウルフルなブルースが迫力満点に歌われる。和田の歌の雄大さやディープな低音感が、ハイレゾの解像度で迫る。

 名曲「Don't Know Why」は、ノラ・ジョーンズの軽さと儚さとはまったく異なる、重武装した重戦車が障害物を押しのけて、力強く前進するような器量感とこぶしの勁さが和田の持ち味だ。カントリー曲がこれほどソウルフルになるとは。エリック・クラプトンのTears In Heavenの重いヴィブラートは、まさに演歌だ。英語歌詞を日本語発音で歌っている。

FLAC:48kHz/24bit
Virgin Music、e-onkyo music

『想い出の歌声は永遠に』
越路吹雪

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 1月8日から始まったテレビ朝日の帯ドラマ劇場『越路吹雪物語』とのタイアップ配信。「ろくでなし」は、まさに越路の十八番。ヴォーカル音像がひじょうに大きく、2つのスピーカーの間に巨大な口が存在する。バックバンドの編成は小さく、艶っぽさと大きなヴィブラートが醸し出す越路のヴォーカルを絶大的にフューチャーしている。ミキシングは歌謡曲調だが、ハイレゾの有り難みは、グロッシーな音調がクリヤーに、ストレートに伝わってくるところにあろう。20曲中、スタジオが9曲、ライブが11曲だ。解像感の高いスタジオ録音と、響きが主体で音像の明瞭度は低いが、それはそれでハイレゾならではの雰囲気感があるライブ録音との比較が愉しい。

FLAC:96kHz/24bit
USM JAPAN、e-onkyo music

『Cannonball Adderley Quintet』
Cannonball Adderley Quintet

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 1969年、ドイツはシュトゥットガルトのカルチャーセンターLiederhalleでのライブ。スタジオ録音とは異なるテンションの高さと、疾走する剛性感が音楽的な面白さだが、音も素晴らしい。ライブ的な臨場感的な音場感なのだが、サックス、アコースティックベース、ドラムスの音像描写がきちっと確保され、音的な解像感、コントラスト感、着色感がとてもリアルだ。カナダの高音質レーベル、2xHDならではのハイファイ性が堪能できる。同一曲が192kHz/24bitと5.6MHzDSDでダブルリリースされているので、その違いを味わうのも興味深い。直截なリニアPCMと、雰囲気感が横溢するDSDという違いだ。

FLAC:96kHz/24bit、192kHz/24bit
WAV:96kHz/24bit、192kHz/24bit
DSF:2.8MHz/1bit、5.6MHz/1bit、11.2MHz/1bit
2xHD、e-onkyo music

『Heggie: Great Scott』
Joyce DiDonato

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 アメリカの人気現代作曲家ジェイク・ヘギーの新作オペラ「グレート・スコット」。歌劇とサッカー試合の物語だ。主役はアメリカの世界的メゾ・ソプラノ歌手、ジョイス・ディドナート。新作と言ってもメロディが豊富で、とても親しみやすい。

 序曲からして躍動感に溢れ、次ぎにどんな音が出てくるのだろうと、ワクワクさせてくれる。本筋もまるでミュージカルのような分かりやすさと華麗さ、前進力がある。音質は素晴らしい。ダラスの劇場でのライブ収録だが、ひじょうに明瞭で、クリヤーだ。歌唱では適切な響きが会場から与えられるが、一方でダイアログも明晰だ。オーケストラも、伴奏のピアノも雰囲気が良い。2015年10月、11月、ダラス、ウィンズピア・オペラハウスでのライヴ収録。

FLAC:96kHz/24bit、192kHz/24bit
Warner Classics、e-onkyo music

『新しい世界』
笹川美和

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 アルバム「新しい世界」より2曲が先行配信。「紫陽花」は偉容なベースを主体に明確なリズムで始まり、太く、剛性の高いヴォーカルが重なる。心をくすぐる魅力的な歌声。地声の安定感と時折入る裏声のチャーミングさが対象的だ。

 個々の音像を立てずに、ヴォーカルとバンドが混然的に融合する集中力の高い音場だ。その分、トータルなのテンション感と鮮鋭度が高い。「家族の風景」はピアノとヴォーカル。声の繊細さ、勁さ、音色感がハイレゾ(48kHz/24bitだが)で見事に捉えられている。ここでは音像は明確だ。モノローグ的な質感が高い説得力を持つ。

FLAC:48kHz/24bit
cutting edge、e-onkyo music

『東京』
JUJU

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 映画『祈りの幕が下りる時』主題歌でJUJU36枚目のシングル。JPOPの最新版だ。以前はハイレゾとはいまひとつマッチしないミキシング、マスタリングがJPOPには多かったが、本作はハイファイ性と、音の芯の力強さ、ヴォーカルの主張力の強い音調が、上手くバランスしている。

 ベース、ドラムス、キーボード、ストリングスで構成されるバンドの音響が明瞭だ。ヴォーカルの粒立ち、鮮明さ、輪郭も確かさが、明瞭なメッセージを伝えている。「藍」の高密度なアコースティックさも素敵だ。

FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Labels、e-onkyo music