[ロンドン 29日 ロイター] - ユーロ圏の国債市場では、ゆっくりではあるが着実にマイナス利回りの銘柄が減ってきている。主要中央銀行が緩和縮小に乗り出し、国債市場がある程度正常に戻りつつある兆しと言える。

29日にはドイツの5年国債利回りが2015年終盤以降で初めてプラス圏に浮上した。

状況は2年前から様変わりした。当時は先進国のほとんどで金融危機対応の大規模緩和が実施され、政策金利は過去最低だったことから、国債利回りも押し下げられた。世界全体では最大で13兆ドル相当の債券がマイナス水準で取引されていた。

ドイツを見ても1年前は、残存7年までの国債利回りはマイナスで推移。2016年に至っては、欧州のデフレ懸念や成長低迷が市場の重圧となり、欧州中央銀行(ECB)が大量の債券買い入れ(量的緩和=QE)を続けていたため、15年国債利回りでさえもゼロ未満だった。

今でもドイツの2年国債利回りはマイナス0.52%だが、水準的には16年半ば以降で最も高い。

アライアンス・バーンスタインの債券部門最高投資責任者ダグ・ピーブル氏は「この1年でECBはネットベースの国債の買い手からもはや新規購入しない存在へと変わっていく。われわれの基本シナリオではECBは来年第1・四半期に利上げする見込みなので、年末までにはドイツ2年国債利回りはすんなりとプラスに戻る可能性がある」と話した。

ドイツ銀行によると、今年は過去10年で初めて、ECBと米連邦準備理事会(FRB)、日銀の資産購入額がこれらの国・地域の国債純発行額との比較で増えていかない。同行は調査ノートに「そうした状況に国債市場がどう対応するかが、今年の資産価格を左右する重要な要素の1つになる」と記した。

<変わる潮目>

マイナス利回り国債の減少は、投資家と政策担当者双方が等しく歓迎している。

年金基金などの保守的な投資家は、長期金利がマイナスに転じたことでドイツ国債をはじめとする「安全な」資産から得られるリターンが痛手を受けた。マイナスの長期金利は、銀行のバランスシートや純利ざやにも打撃を与え、景気回復期待を醸成しながらデフレマインドの拡大阻止に努めている政策担当者にとって頭痛の種だ。

トレードウェブのデータに基づくと、同社で取引されているユーロ圏7兆ユーロ相当のうち約42%はまだ利回りがマイナスとなっている。この割合は16年7月の52%から低下したとはいえ、DZバンクの金利ストラテジスト、アンディ・コッサー氏は「多くの投資家はさらに利回りのプラス転化が続くのを見たがっており、祝杯を挙げるのはその後だ」と慎重な姿勢を崩さない。

ECBは金融政策の「正常化」に踏み出したばかりで、少なくとも9月末までは債券を買い入れる。償還資金の再投資も予想され、国債利回りの上昇余地を限定しそうだ。

それでも潮目は変わりつつある。フィッチ・レーティングの試算では、昨年末の世界全体のマイナス利回り債券は10兆ドル弱で、ピーク時よりも3兆ドル以上少ない。

ブルーベイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、マーク・ダウディング氏は、フォワード取引においてはドイツ国債の短期ゾーンが2年以内に20ベーシスポイント(bp)近くのプラス水準になることを既に織り込んでいると指摘した。つまりその時点までに、マイナス利回りのユーロ圏国債はなくなると市場が信じていることは明白だ。

フランスとイタリアの短期ゾーンの国債利回りは足元であと2─4bpでプラスになる地点まできている。ダウディング氏は「向こう1年間にマイナス利回りの国債は半減しそうだと言ってもほぼ差支えない」と語った。

(Dhara Ranasinghe記者)