野田佳彦総理は、1月24日、施政方針演説を行った。それに続き外務大臣の外交演説、財務大臣の財政演説、経済財政政策担当大臣の経済演説が行われた。これらを政府四演説という。なお、通常国会の冒頭に総理から行われるのが「施政方針演説」で、臨時国会や特別国会などは「所信表明演説」という。

国民への説得より
野党への協力要請の気持ちが先走る

 野田総理の施政方針演説には少し面食らった。福田総理や麻生総理の演説が引用されていたからだ。私の記憶では他の総理の演説を引用したものを思い浮かばない。普通は演説を引き締めるために、過去の賢人らの引用を1回だけ行うものだ。政治家は自分の言葉で国民に訴えて支持を勝ち取るのが商売である。あまり他人の言葉を借りないほうがいい。

 しかも、野田総理は遠い過去ではなく直前の引用だ。野党の協力を得たい気持ちばかり先走っていた。国民が納得すれば、野党も協議に応じざるをえなくなるのに、国民への説得を行わずに、その場(国会本会議場)にいる野党に協力要請していたようで、あまりにも無粋だった。

 当人たちはどう思っているのだろうか。麻生氏は、「いいとこ取りだけされた。何となく抱きつかれたような感じだ」、「私の演説では『景気回復が前提』という条件が付いていた。首相は景気が回復したと思っているんだろうが、世の中にそう思っている人はいない」と語った。

 1月24日の野田総理の演説は以下の通りだ。

「……『経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制抜本改革を行うため、二〇一一年度までに必要な法制上の措置を講じます。』……これらは、私の言葉ではありません。三年前、当時の麻生総理がこの議場でなされた施政方針演説の中の言葉です。私が目指すものも、同じです。」