「顧客ずらし戦略」とは、スキル等を含めた自社の本質的なアセット(資産)を見つめ直し、新たなビジネスを展開して、これまでとは異なる顧客をつかまえること。米メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースも、巧みな「顧客ずらし」を実行している球団だと言える。(フィールドマネージメント代表 並木裕太)

米ドジャースが球団の全データを「投資対象」として開示する理由ドジャースは2015年5月に、起業家やスタートアップとともに事業共創を行うプログラム「Dodgers Accelerator(ドジャース・アクセラレータ)」)を発足させた Photo by Katsuyuki Hasegawa

ドジャースが実施した
「事業共創プログラム」

 この連載の第1回では、MLBボストン・レッドソックスのビジネスを「顧客ずらし」の観点から考察しました。

 試合の興行スキルを生かしてコンサートなどのイベントマネジメント業に乗り出したり、球団や球場のスポンサーシップを毎年売り切る営業力を生かして広告代理店業務を展開したりと、レッドソックスは既存スキルに目を向けることで野球以外のところに顧客をつくりだすことに成功しています。

 一方、昨シーズンのナ・リーグ覇者となったロサンゼルス・ドジャースも、巧みな「顧客ずらし」を実行している球団だと言えるでしょう。

 2015年5月に発足した「Dodgers Accelerator(ドジャース・アクセラレータ)」が、その正体です。一球団によるアクセラレータ・プログラム(企業や組織がスポンサーとなり、起業家やスタートアップとともに事業共創を行うプログラム)の実施は、MLBでは初めての試みでした(ちなみに日本では、横浜DeNAベイスターズが「ベイスターズ・スポーツ・アクセラレータ」を2017年12月より開始しています)。

「ドジャース・アクセラレータ」への応募総数は、なんと2000社近くにも上ったそうです。そのうち、厳しい審査を経てプログラムへの参加を認められたスタートアップは、わずかに10社。彼らは2015年11月11日、ドジャースのオーナーたちや外部投資家らの前で事業内容をプレゼンする「デモ・デイ(demo day)」に臨みました。

 会場はドジャー・スタジアム。そのピッチャーマウンドに立って文字どおりの“セールスピッチ”を行い、投資を呼びかけたのです。