ルンバやドローン、そしてpepper、再発売されたaibo。これらはすべてロボットです。AIの発達とともに、現在、注目されているロボティクス。工業分野だけでなく、サービスや介護、エンターテインメント、そして家庭でも、AIを搭載したロボットが登場しており、これらを使いこなし、そして新しいビジネスに結び付けることが期待されています。今回は、ロボティクスの専門家である著者が、わかりやすく書いた新刊『ロボットーーそれは人類の敵か、味方か』の中から、エッセンスを抜粋して紹介します。

ハードウェアに強い2社を買収した
ソフトバンクの戦略とは?

さて、前回、ロボティクス(ロボット工学)という学問分野では、体にあたる「ハードウェア」の部分と、脳にあたる「ソフトウェア」の部分に大きく分かれているとご説明しました。

 このソフトウェアの部分がAIです。この脳の部分が急速に進化したため、ロボティクス全体もひっぱられて進化のスピードを上げている、というのが現状です。

 そして、この本を執筆している最中(2017年6月)に、大きなニュースが飛び込んできました。
ソフトバンクがボストン・ダイナミクス社、およびシャフト社(SCHAFT)の2社をGoogleから買収した、という発表です。

 ボストン・ダイナミクス社というのは、タフなハードウェアで有名なアメリカの企業で、人間が強く蹴っても倒れない4足歩行のビッグドッグ(BigDog)、そして、どんな路面もバランスを保って歩く2足歩行のアトラス(Atlas)など、確実に動くハードウェア(躯体)を発表している企業です。

 そしてシャフト社(SCHAFT)は、東京大学発、つまり日本のベンチャー企業ですが、2013年にGoogleに買収されました。そして、今回、ソフトバンクが日本に買い戻したという形になります。シャフトの二足歩行のロボットも、タフで安定しているのが特徴です。

「Pepper」というAIがメインのロボット、つまりソフトウェア重視のロボットを展開しているソフトバンクが、なぜハードウェアに強い2社を買収したのか。

タフなハードウェア(躯体)に、「Pepper」で蓄積した頭脳(AI)をインストールして、次のヒューマノイドブームの幕開けとなるのか。いろいろな可能性が感じられる動きで、研究者として興味は尽きません。

 さらに、一世を風靡したソニーのロボット犬である「AIBO」が、2018年1月に「aibo」として復活するというニュースもありました。ソニーが一度撤退したロボット事業に戻ってきたのです。

 これだけではありません。多くの企業が注目し、参入しているロボットの世界は今、激動期にあるといえるでしょう。

 実は日本のロボット技術は、世界のトップレベルです。つまりロボット大国といってもよい状況です。約50年前の日本の高度経済成長期の好景気は、人々の頑張りだけでなく産業用ロボットにも支えられた側面がありました。そして、それによって他の国では真似のできないロボットのさまざまなデータを蓄積しています。

 今後、日本が世界をリードする産業、つまり日本復活のカギを握るのは、このロボティクスになりそうだ、私にはそう思えるのです。