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イノベーションを起こせる人材は
どこにいて、なにを欲しがっているのか

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第77回】 2018年2月9日
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 イノベーションの創出および推進では、ビジネスとテクノロジを結び付け、アイデアを具現化していくことを考えると、基本となるコミュニケーション力、デジタル技術の基礎知識、デジタルビジネスの基礎知識、イノベーション創出法といった人材タイプに関わらず共通して必要なスキルが必要となると考えられる。

 またこれらに加えてそれぞれ人材タイプに応じて、大きく「ビジネス」「テクノロジ」「デザイン」の3つの領域のスキルが必要になると考えられる。

 「ビジネス」の領域では、事業全体を俯瞰的に把握し、投資や経営資源の配分などに対して的確な意思決定ができる「ビジネス・マネジメント力」、自社の業界を理解し、ビジネスを取り巻く社会・経済の環境変化と将来動向を読み解く「外部環境把握力」、そして内部・外部の人材・組織を巻き込みながら、人脈を拡大し、必要となる体制構築や予算確保を牽引する「組織牽引力」の3つが求められ、これらは主にプロデューサー・タイプの人材が担うであろう。

 「テクノロジ」の領域では、先進的技術や各種要素技術を調査・探索できる「技術調査力」、適用可能な技術を的確に評価・選定できる「技術適用力」と、アイデアを迅速に具現化し、それに対するフィードバックを反映して継続的に工夫改善する「試作・改善力」が求められ、これらは主にデベロッパー・タイプの人材が担うと考えられる。

 「デザイン」の領域では、市場や顧客の課題やニーズをくみ取って、ビジネスやサービスを発想し、それを有効なコンセプトに発展させることができる「着想力」、アイデアやコンセプトを、分析・組み合わせ・図解・説明などを駆使して、魅力ある企画に仕立て上げることができる 「企画構築力」、合意形成や相互理解をサポートし、チームや参加者の活性化および協調的活動を促進させる「ファシリテーション力」が必要であり、これらは主にデザイナー・タイプの人材が担うこととなるだろう。

IT部門人材を起用することは可能か

 さて、このようなイノベーションの創出・推進に適した人材は企業内に存在するのであろうか。まずは、これまで企業内のIT専門家として活動していたIT部門人材の適性について検討してみよう。

 現在のIT部門に所属する人材には、イノベーション人材の3つのタイプごとに適合する点と不足する点が存在すると考えられる(図2)

 プロデューサーが主に担うビジネス・マネジメント力や組織牽引力については、これまでのプロジェクト管理や、事業部門間の調整を行ってきたIT部門の経験やスキルを活かすことができるだろう。また、デベロッパーが主に担う技術調査力、技術適用力、試作・改善力についても、これまでIT技術の目利き役を果たしてきた経験が役立つはずである。

 一方、この領域のスキルについては、ユーザー企業の人材があらゆる最新技術を研究し、熟知することは困難であったり、プロトタイプの開発を迅速に行うスキルが不足したりするため、ITベンダーの力を借りることも多いと考えられる。その際には、IT部門の人材が他の人材(プロデューサーやデザイナー)とITベンダーの橋渡し役を担うことができる。

 現時点においてIT部門に最も不足しているのは、デザイナーのスキルではないだろうか。アイデアを生み出したり、モデル化したりするには情報システム関連のスキルだけではなく、デザイン思考や未来視点で仮説を設定するスキルを必要とする。着想や企画構築のプロセスも、これまでのシステム構築の超上流工程で行われてきたビジネス分析や要求定義とは異なるアプローチが必要となる。

 また、イノベーション案件の多くは、最初から明確なシステム要件が決まっているわけではないため、仮説を検証しながら軌道修正を繰り返していくことが求められ、アジャイル的にプロジェクトを推進するスキルが必要となる。また、プロデューサーにもデザイナーにも必要な外部環境把握力は、ビジネスを取り巻くさまざまな環境に目を向ける幅広い視野と、最新の動向や将来の行く先を正しく見極める洞察力が必要となる。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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