[東京 6日 ロイター] - 世界的な株安が、政府・日銀の政策スタンスにも影響を与えかねない情勢となりつつある。株安がさらに進めば、3%の賃上げが今春闘で実現できなくなる可能性もあり、政府は主要7カ国(G7)の当局者と市場安定に向けて協調したい考え。「デフレ脱却」のシナリオが後ずれしかねないなか、政府、日銀は実体経済への影響を見極める方針だ。

<好業績と株安>

「どうこう言うつもりはない」。麻生太郎財務相は6日の閣議後会見でこう述べ、株価急落を冷静に受け止める姿勢を示した。「企業業績は良くなった」とも述べ、市場の反応に懐疑的な見方も示した。

昨年10月以降、4カ月間で約3000円値上がりした日経平均株価<.N225>。経済再生を最優先課題に位置付ける安倍晋三内閣にとって、株価の上昇は追い風にほかならない。

だが、政府内には経済の成長速度に比べ、株価上昇のスピードが速いことから「いつかは調整が入る」と、先行きを懸念する声があった。

麻生財務相の声を裏付けるように、政府内では「来るべきものが来ただけ」との受け止めが多い。

<賃上げに影響か>

だが、株価下落が続き、個人消費や企業の賃上げに株安・円高の影響が波及する懸念は拭えない。

別の政府関係者は「春闘前までに市場の動揺が収まらなければ、企業の賃上げに影響が出かねない」と漏らす。

市場介入という手段がある為替とは異なり、株価に対して政府、日銀が取れる策は少ない。今週、カナダで開かれる主要7カ国(G7)の事務方幹部会合で、市場動向を巡る議論が交わされる可能性もあるが、株式市場をけん制する効果は限定的とみられる。

ただ、市場変動に伴う心理の冷え込みが世界経済に冷や水を浴びせる事態を避けたいとの思惑は、各国とも一致しており、今後の国際会議における議論の下地を作る意味合いはある。

市場では、米国のトランプ政権が打ち出した大型減税やインフラ投資計画が「完全雇用」の米経済を過度に刺激し、それが「適温経済」のバランスを崩すことにつながるとの懸念が、今回の市場変動の根底にあるとの見方が根強い。

株価下落が短期間で終息しなければ「安倍首相のレガシーになり得るデフレ脱却のタイミングが後ずれしかねない」と、先の政府関係者は今後の動向に神経をとがらす。

<日銀も注視する心理面と為替への影響>

日銀も、市場の混乱が日本の実体経済や物価に与える影響を注視する。今のところ内外経済と企業業績は良好で、史上最高値を更新し続けてきた米国株式市場の調整との見方が多い。

黒田東彦総裁は、6日午後の衆院予算委での質疑の中で「株価のベースとなる企業収益やファンダメンタルズは内外ともにしっかりしている」「日米欧の実体経済は非常に良好で、それを背景に企業収益も業種の広がりを伴いつつ改善している」と述べ、経済の実態はしっかりしているとの見解を強調した。

ただ、日銀内でも、不安定な市場環境が続けば、企業心理が冷え込み、積極化しつつある賃上げや設備投資に慎重になる可能性も否定できないとの声が一部に出ている。

さらに企業収益と密接な関係のある外為市場の動向をみると、すでに昨年12月日銀短観で示された大企業・製造業の2017年度の想定為替レートである1ドル=110.18円よりも円高となっている。

日銀内では、外為市場で円高が進めば、企業収益下振れや物価押し下げにつながりかねないと懸念する声もあり、グローバルなマネーフローと世界的な株価、為替の行方を注視していくとみられる。

(梅川崇、伊藤純夫 編集:田巻一彦)