ところが、である。進出時期や機材についてこれだけ表明しておきながら、具体的な路線や、肝心なバニラとピーチ、どちらの会社が運航するかについては未定のまま。これには業界関係者も首をかしげる。2社の状況から考えると、「自明の理」であるからだ。

 そもそもANAHDのLCC戦略は、一定の需要がありながらもANAでは採算が合わない都市に、LCCが飛ぶことでグループのネットワークを世界に張り巡らせる狙いがある。これにのっとれば、関西国際空港を拠点にするピーチが東南アジアへ就航するのが有力だ。関空から同方面にはANAの直行便がなく(他社とのコードシェア便を除く)、グループの空白領域を埋めることができるからだ。

 それでも“中途半端”な発表に終わったのには、どうやらバニラとピーチの統合問題が関係しているもよう。「グループ内に二つあるLCCを一つにするべきか否か。しばらくは二つかもしれないが、時間の問題である」(前出のANA幹部)。ANAHDにはLCC事業において中距離進出という課題の他に、かねてこの統合問題があり、水面下では2社を統合させた新会社に中距離を担当させる案も検討していたとみられる。

 2社の統合が検討されるのはなぜか。それは同じ12年に就航したものの、バニラがピーチの後塵を拝しているからに他ならない。

 2社の直近の業績を比較すると、ピーチは売上高517億円、営業利益62億円。同社は関空を拠点に、若い女性を狙ったマーケティングが奏功し、国内外に路線を伸長。LCC市場で善戦している。

 一方のバニラは売上高239億円で7億円の最終損失。同社はもともとANAと、マレーシアのLCC、エアアジアの合弁会社として発足したが、就航から1年もたたず合弁を解消。ANAHDが全株を引き取り、社名変更して営業を続けてきた。しかし業績は鳴かず飛ばずで、「路線や価格設定、運航の効率化など、LCCとしての際立った強みを育てられていない」(競合関係者)との指摘が多い。

 急成長したピーチを取り込もうと、ANAHDは昨春、300億円を投じてピーチへの出資比率を引き上げて子会社化。これをピーチが「主」でバニラを「従」とした統合への布石とみる向きは多い。