[東京 7日 ロイター] - 日銀は7日、「決済システムレポート・フィンテック特集号」を公表した。この中で、中国のスマートフォン決済の「アリペイ」やブロックチェーン、仮想通貨など新たに登場しつつあるフィンテックが、金融経済全般に影響を及ぼしうると指摘。他方でリスクも挙げ、仮想通貨を巡る問題などが金融全体への信認を損なわないか、中央銀行として注視していく姿勢を示した。

<新サービス続々と>

フィンテックについてリポートでは、モバイル通信を通じた支払決済サービスによりATMなど金融インフラを持たない地域にも金融サービスを行き渡らせる「グローバル化」、個人にあった金融サービスを届ける「パーソナル化」、配車アプリのようにサービスと決済を一体化する「シームレス化」などを挙げた。また1日24時間の即時送金も可能にする取り組みなど金融インフラにもインパクトがあるとした。

金融安定の効率化にも寄与する潜在力があるとして、「ビッグデータ活用により従来は観察できなかった資産間の相関などを見いだすことができれば、ポートフォリオ多様化を通じたリスク分散などに寄与する」と位置付けている。

ただ、既存金融機関が重い固定インフラを抱える場合、新たに参入する身軽なフィンテック企業との競争が、「少なくとも短期的には収益下押し圧力として働く可能性もある」という。一方で、既存金融機関によるフィンテック企業買収など、フィンテックを自らの業務に取り込む事例もあるとして、チャンスにも言及した。

<金融安定に新たなリスク>

リポートは、情報セキュリティーやサイバー攻撃への対応、マネーロンダリング・テロ資金供与対策などの面で適切な対応が取られない場合、金融安定にとっての新たなリスクにつながる可能性があると指摘した。

「情報やデータの量は飛躍的に増加しており、プライバシーの侵害や顧客の損害につながったり、サイバー攻撃のターゲットとなったりするリスクを増加させている面もある」という。

リスクが顕在化した場合、新しい情報サービスを活用する金融サービス全体に対する警戒感が、フィンテックや金融イノベーションの阻害要因となる恐れもあるとしている。

<仮想通貨巡る問題、中銀としても注視>

相次ぐ仮想通貨の流出問題については、「仮想通貨を巡る取引や資金調達を巡る問題が金融全体の信認を損なうことがないよう、中央銀行の立場からも十分注視していく必要がある」と警戒感を示した。

仮想通貨自体についても、「裏付け資産など価格の『アンカー』に相当するものがなく、投機資金の流入などに応じて値動きが大きくなりやすい」ことを理由に、「支払決済手段としての使いにくさにつながりやすい」と指摘した。

実際、「現時点では仮想通貨が支払決済手段として使われるウエートは僅少であり、ほとんどが投機的な投資対象となっていると考えられる」という。

その上で「仮想通貨の取引に参加する主体は、このような仮想通貨取引に伴うリスクを十分認識した上で取引を行うことが求められる」と注意喚起した。

さらに、仮想通貨を利用した資金調達手法「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」については、証券関連法制・規制の適用を回避するために使われ、ひいては投資家や消費者が損害を被る可能性があるとして、各国で規制や監視が強化される方向にあることを示した。「ICOに参加する投資家は、リスクを十分認識することが求められる」としている。

<デジタル通貨発行、主要中銀は慎重>

スウェーデンや中国以外の主要中銀では、中銀自体が広く一般に使えるデジタル通貨を発行することには現時点で慎重であるようだ、とした。他方で、大口資金決済や証券決済などへの新技術の応用は既にデジタル化されている中銀当座預金やブックエントリー証券で展望されていることから資金仲介への影響は生じにくいとしている。また既存の金融集中型インフラが十分な信頼を得ている場合には、歴史の浅い新技術で代替することのハードルは高いとも指摘した。

(中川泉)