100年以上も続く、日本の働き方改革。その動きが活発化してきたことは歓迎します。例えば残業上限も、厚労省の法案にある年720時間以内から、フランスの年220時間に少しでも近いもので法制化されれば、社会的な進歩であることは確かです。しかしこうした法整備によっても、悪しき労働慣行(極度の残業依存や休日返上、法的原則と現場実態のダブルスタンダードの使い分け等)が大きく減るとは筆者には思えません。理由は、この100年、働き方改革についての議論や対策の際に、「文化」という根本的な視点・論点が欠けてきたからです。(Nagata Global Partners代表パートナー、パリ第9大学非常勤講師 永田公彦)

30年前より悪くなった日本の労働環境

フランスから見た、日本の働き方改革に足りない視点

 筆者は、80年前半から90年代前半にかけて日本でサラリーマン生活をしていました。その頃には既に、「長時間労働を改めよう!有給休暇をしっかり取ろう!多様な勤務体系(時間、方法、場所)を取り入れよう!女性が活躍しやすい職場をつくろう!単線型のキャリアパスや価値観を改めよう!」というのが、今ほどではないものの、強く叫ばれていました。

 政官財あげた様々な議論や取り組みもされており、筆者も一人の労働者として、また会社側につく管理スタッフの端くれとして、悩み、考え、微力ながら改善を心掛けてきたテーマでした。

 その後日本を離れて20年が経ち、今の日本人の働き方を見るとどうでしょう。当時と根本的には変わっていません。週休2日制こそ定着したものの、実労働時間(パートタイム労働者除く)は、年間2000時間前後で高止まりです。月平均残業時間は47時間に上り、仮に月21日出勤とすると毎日平均2時間15分の残業です(参考:Vorkers調査2015年)。これに加え、世界が注目する日本の労働慣行たる、サービス残業も横行し続けています。バブル崩壊直後の90年半ばに50%を超えた有給休暇の取得率も、この15年間は40%台で低空飛行です。