自己認識(セルフアウェアネス)の能力は、マネジメント分野における重要能力として研究が進んできた。己を正しく知るリーダーは、部下との関係、判断力やコミュニケーション力、仕事のパフォーマンスなどが優れているという。本記事は最新の包括的な研究成果を基に、自己認識力の実態と向上方法を伝授する。


「自己認識」(セルフアウェアネス)は、マネジメントの最新の流行語となっているようだ。そして、それには十分な根拠がある。

 研究が示すところによれば、自分について明確に認識している人は、より自信があり、より創造的である。より適切な判断を下し、より強い人間関係を築き、コミュニケーション能力も高い。嘘をついたり、騙したり、盗んだりする可能性が低い。仕事のパフォーマンスが優れ、昇進しやすい。そして、より有能なリーダーであり、その部下の満足度は高く、会社の収益向上にも貢献している。

 私は組織心理学者およびエグゼクティブコーチとして、リーダーによる自己認識の効果を15年近く間近で見てきた。そして、このスキルが習得可能であることも目の当たりにしてきた。

 けれども、私が自己認識についてさらに深い研究を始めたときには、科学と実践との間の著しいギャップに驚かされた。総合的に考えると、人々はこの重要なスキルの高め方について驚くほどわかっていないのだ。

 2014年に私と研究チームは、自己認識に関する大規模な科学研究に乗り出した。5000人近い参加者を対象に10件の調査を実施し、自己認識とは実際に何なのか、なぜ必要なのか、どのようにして高められるかを検証した(目下、学術誌への寄稿に向けて成果を執筆中である)。

 我々の研究により、自己認識とは何か、それを高めるには何が必要かに関し、多くの驚くべき障壁、誤った通念、そして真実が明らかになった。ほとんどの人が自分は自身を知っていると信じているものの、自己認識は、実に稀有な資質であることが判明した。我々の推計では、調査対象者で実際にその条件を満たしているのは、わずか10~15%なのだ。

 以下の3つは、特に注目すべき研究結果である。リーダーはどうすれば、自己をより明確にとらえるスキルを習得できるのか。その方法を示す実用的なガイダンスを我々が開発するうえで、これらが役に立っている。