有効求人倍率が過去最高を更新した2017年。「人手不足の割には景気の良さを実感できない」という見方も多かったが、ここに来て「アベノミクスによる金融緩和の恩恵が浸透してきた」と指摘する専門家もいる。人手不足が深刻化するなか、就労者の待遇はどう変わっていくのだろうか。(清談社 松原麻依)

企業の利益は総体的に上昇したが
賃金が上がらない理由

非正規もようやく賃上げの流れになってきたが、どれだけ景気が上向いても「バブルの再来」というような話にはなりそうもない

 有効求人倍率がハイペースで上昇している。2016年の時点で平均1.39倍(厚生労働省発表)とバブル期並みの高水準を記録したが、さらに上昇を続け、17年10月の有効求人倍率は前月比より0.03ポイント高い1.55倍(同)となった。

 もっとも、こうした明るいニュースとは裏腹に「求人倍率が上昇しても景気のよさを実感できない」という声が多く聞こえているのも事実。経済ジャーナリストの磯山友幸氏は、深刻な人手不足にもかかわらず、景気回復を実感できなかった理由のひとつに、企業の「内部留保」の存在を指摘している。

「アベノミクスによる金融緩和で円高が大幅に修正されたこともあって、企業が稼ぐ利益そのものは総体的に増えています。実際、企業の純利益は14年度で41兆3101億円と前年比10%も増加、その後も高止まりを続けています。その一方で、多くの企業がその利潤を設備投資や配当や人件費に回すことよりも、内部留保として手元に残しておくことを優先してきたのです」

 通常、有効求人倍率は失業者の増減に関わるため「景気のよさ」を測るひとつの指標となる。しかし、企業が内部留保を溜め込んだ影響もあり、人手不足にもかかわらず、労働分配率(生産された付加価値のうち、どれだけが人件費として分配されたかを示す)は上がらなかった。

 賃金が上がらないのなら当然、個人消費は落ち込んでしまう。金の流れが滞れば、その恩恵に預かる人も少なくなるのだ。景気回復を実感できなかった理由のひとつがそれである。

「高度経済成長期からバブル期までは、賃金は年々ベースアップしていくのが普通でしたが、ここ20年間はデフレが続いたため、そのマインドが失われてしまったのではないでしょうか。経営者側としても先行きの不安から、賃金上昇に踏み込めなかったのだと思います」