スカイマークはなぜ、破綻からたった2年で再生できたのかPhoto by Yoshihisa Wada

最初の社員挨拶で示した「私はハゲタカではない」

 私は、スカイマークの民事再生計画が確定した2015年9月に社長に就任した。再生の主軸となるスポンサーは投資ファンドであり、新社長には銀行出身者が就く。スカイマークの社員が「ハゲタカが来た」「コストカッターが来た」と感じてもおかしくはなかった。

 しかし、そんな気分を抱えてもらったままでは再生などおぼつかないし、誰も社長として受け入れてはくれないだろう。私自身もハゲタカ的に振る舞う気持ちなど微塵もなかった。

 だから最初に社員に挨拶をしたときに私は「3つの約束」を示した。まず私自身は“片道切符”での就任であり、スカイマークの再生を果たしたらそれを勲章に政策投資銀行に戻るような気持ちはないこと。

 2つ目が、金融機関の出身者が経営トップに就くと、すぐにコストカットだと思われるかもしれないが、そのようなことは考えていない、ということ。「スカイマークは、出資してくれた株主との約束で成長力を取り戻し上場させなければならない。そのためには大リストラなどをやることは賢明ではなく、むしろ一緒に成長の芽を育てよう。皆さんと一緒に会社を成長させていけたら、嬉しい」と。

 3つ目が、私は銀行出身だからといって特定の株主に肩入れするようなことはない、ということ。スカイマークにはインテグラルと全日空、そして政策投資銀行が組成したファンドを通して2つの銀行が出資している。銀行出身だからといって政策投資銀行のためになどとは絶対に考えない。スカイマークにとって何が良いかで物事を決める、ということ。

 この3つを強調したが、社員にしてみれば半信半疑で当然だ。そこから一歩踏み出すために、背中を押してくれたのはインテグラルの代表で、スカイマークの会長に就任した佐山展生さんだった。

 佐山さんは、民事再生手続きの申請後にすぐにスポンサーとして名乗りを上げ、そのときに全国の支店を全部回り、社員に対して「社員のリストラはしません。どうかご家族も含めて安心して働き、再生に力を貸してください」と訴えていた。

 新体制の発足と同時に「もう一度全国を回りましょう」と2人での支店行脚を勧めてくれた。そのなかで、「もう少し具体的に社員の声を聞いてみたい」と実感して始めたのが「1対1面談」だった。といっても全国に社員は2000人ほどおり全ては無理だった。とりあえず主任以上の200人と面談を始めることにした。

 面談では、「なにを言っても構わない。他者に漏らしたり、発言の内容で評価を変えるということもしない。その代わり、私自身も本音を言うので、君たちも他者に話さないように」と原則を立てた。

 私が一番聞いてみたかったのは、「社員は、スカイマークをどのような航空会社にしたいと思っているか」だった。