国税最強部門、「資料調査課」(税務署では調査できない困難案件、例えば、悪質、海外、宗教事案などを扱う部署)出身であり、タックスヘイブンの実情を描いた『税金亡命』の著者でもある佐藤氏が、金塊密輸の儲けのカラクリについて語る。

金塊密輸で大儲け!
カギは消費税

 金塊を巡る事件が相次いで起きている。

佐藤弘幸(さとう・ひろゆき)1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、同部統括国税実査官(情報担当)、電子商取引専門調査チーム、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。他の著作に「国税局資料調査課」(扶桑社)がある。国税局課税部資料調査課(機能別に派生して設置した統括国税実査官を含む)は、税務署では調査できない困難事案を取り扱う部署である。資料情報及び決算申告の各係数から調査事案を選定、実地調査する。税務署の一般調査と異なり、「クロ」をターゲットにしているので、証拠隠滅や関係者との虚偽通謀を回避する必要があり、原則として無予告で調査を行う。

 2016年の7月、博多駅前で白昼堂々、約7億円相当の金塊が警察官を装った男たちに盗まれた。

 2017年4月、東京銀座の路上で、自営業の男性から金塊の売却代金約7200万円が入ったバッグを奪ったとして、職業不詳の男2人と男子高校生1人が強盗容疑で警視庁に逮捕された。

 2017年6月、約1億3000万円相当の金塊約30キロを服の中に隠して韓国から密輸したとして、愛知県岡崎市などに住む40~70代の主婦ら女5人が逮捕された。5人は2016年12月、金塊をタンクトップの内側に縫い付けたポケットに入れるなどして隠し、韓国・仁川空港から中部国際空港に密輸していた。密輸を手助けした運び屋と見られている。

 事件の背景には、“ヤミの錬金術”がある。その手口を見てみよう。金塊はなぜ日本に持ち込まれるのか。みなさんはご存じだろうか?

 その理由は日本の「消費税」にある。

 消費税が平成元年に導入されて早いもので30年近くがたつ。当初の税率は3%。その後5%、8%、そして2019年10月からは10%になる予定だ。税関での摘発件数は2014年に急増しているが、同年は税率が8%になった年であり、税率アップと密輸の増加は密接に関係している。

 消費税の課税対象は、商品の販売、資産の貸し付け、サービスの提供などだ。国内の取引だけでなく「輸入(個人輸入を含む)」も含まれている。金塊も例外ではなく、購入時にはもちろん消費税がとられる。日本の消費税のように、諸外国にも似たような付加価値税や小売税がある。

 ただし、すべての国に消費税のような販売金額に課税する税金が導入されているわけではない。つまり、金塊を買っても、国・地域によっては消費税が課税されないことがある。