国内製薬大手のエーザイは超大型製品だった認知症治療薬「アリセプト」の特許切れ以降、長い低迷期が続く。次世代認知症治療薬を物にして、崖の下から這い上がれるか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)

「現在わが社は世界の製薬産業の中でも、最も積極的に研究開発に資源を投入している一社といえる」

 2月2日の2017年度第3四半期決算説明会。エーザイの柳良平CFO(最高財務責任者)は今期業績予想など(図(1))を説明する中で、開発中の次世代アルツハイマー型認知症治療薬を念頭に、「今が辛抱の時」と言わんばかりに強調した。13年3月期以降、研究開発費が売上高比率約21~24%と高い傾向にあり、業績を圧迫しているからだ。

 今年で経営トップに就いて30年、創業家筋の内藤晴夫代表執行役CEO(最高経営責任者)が率いる同社の顔といえばアルツハイマー型認知症治療薬だ。この領域で世界初の薬「アリセプト(一般名ドネペジル)」を1997年に発売すると、ピーク時の10年3月期には世界で約3200億円を売り上げた。アリセプトはエーザイの名を一気に世界に広めた。

 エーザイは武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共と並んで、国内大手製薬4社の一角に数えられる。業界最高水準の給与(17年3月期有価証券報告書で平均年間給与1039万円)、「日本製薬団体連合会」トップなどを務めてきた会社としての“格”──などを総合評価して、業界内でそう位置付けられてきた。