備蓄品の3つの管理要件については、それぞれ次のような対策案を導きました。

 まず品目と数量の見直しについて。品目についてはカップラーメンの他に缶入り乾パン、缶詰、カロリーメイト、ペットボトルの水を加え、数量については災害時に帰宅困難に陥るであろう遠距離通勤者の人数分を見積もって2日分を購入しました。また、湯を沸かすアウトドア用のガスストーブや割りばし、紙皿、紙コップも用意しました。

 次に備蓄品の更新管理方法。乾パンや缶詰は開封せずにそのまま保存し、将来消費期限が近づいたら会社の行事等で社員に配ることにしました。一方、比較的保存期間の短いカップラーメンやカロリーメイト、ペットボトル水については、いつも通りローリングストック法(消費した分を随時補充する方法)で商品の品質を維持しました。

 保管場所と管理担当も、とくに問題なくクリアしました。すべての備蓄品が保管場所に収まってからは、定期的に担当者が備蓄品目と数量の抜き打ち検査を行ったほか、保存期間の短い品目については防災訓練を行った後に希望する社員に分配しました。

 さて1年が経過し、「Check」の時期がやってきました…。

標準化はスタートラインに
過ぎない

 Tさんたち「Check」の評価・検証チームは、次の観点からチェックを試みました。

(1)備蓄品の保管場所は安全及び衛生面で適切であったか?
(2)帰宅困難者の想定人数分の備蓄数量は常時足りていたか?
(3)賞味期限の短い品目の入れ替えは、タイムリーかつスムーズかつムダなく行われたか?

 (1)については、スチール棚に備蓄品を入れた段ボールを直置きにしたままでは湿気が心配との意見があり、すのこを敷くことにしました。(2)についてはローリングストック法で管理している品目は不足するどころか、むしろ、数量が少し過剰気味にストックされていることが分かり、もう少しきめ細かな管理が必要との意見で一致しました。(3)はまったく問題なく行われました。

 結果として今回のPDCAで計画した対策は、野放し状態だったこれまでよりは、一歩進んだものであることが実感できたと言えます。「Act」の判定は次のとおりです。

“(1)や(2)の改善点については早急に対策を講じる。この先3年間は、この方法を標準的な備蓄管理手順として取り入れる。ただしこの方法の継続によって、管理品質が低下してきたり、新たな問題や課題が出てくるようなら、再度PDCAサイクルに取り込んで解決を図るものとする。

昆 正和(こん・まさかず)/BCP策定支援アドバイザー。主に中小企業のBCP策定指導や研修、講演活動を行っている。『山のリスクセンスを磨く本』(山と渓谷社)、『今のままでは命と会社を守れない!あなたが作る等身大のBCP』(日刊工業新聞社)、『リーダーのためのレジリエンス11の鉄則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。ブログ:「昆正和のBCPブログ
 
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