[ニューヨーク 5日 ロイター] - 欧州連合(EU)がリサーチ費用と売買手数料の分離請求を義務付ける新金融規制を導入し、銀行や証券会社が調査予算の縮小に動いたのを契機に、これまで外部からリポートの提供を受けてきた資産運用会社が自前の株式調査体制の強化を進めている。

EUは利益相反問題への対応として1月に新金融規制「金融商品市場指令(MiFID)II」を導入。銀行などセルサイドに対し、資産運用会社などバイサイドに提供する調査の費用をトレーディングコストと切り分けて請求するよう義務付けた。

新規則が適用されるのはEU域内で業務を行っている金融機関に限られるが、新規則導入を受けて資産運用会社の間では世界的に調査リポートの利用状況の見直しが起きている。

金融機関の幹部やアナリストなど十数人の聞き取りによると、資産運用会社は既に、優位性の維持が困難な主要セクターで定期的な調査を打ち切っており、支配的な地位が保てる、狭い範囲に調査の対象を限定することになりそうだ。

資産運用会社は調査体制強化のために人員を採用しているが、雇用されるのは金融業界でキャリアを積んだ人材とは限らない。

例えばARKインベストメント・マネジメントは人工知能(AI)やインターネットなどの分野をカバーするため、画像処理半導体大手の米エヌビディア<NVDA.O>で人気ゲームソフト「ジーフォースエクスペリエンス」の開発に携わったジェームズ・ワン氏を採用した。

ワン氏は「金融業界に身を置くとは思ってもいなかったし、まして東海岸で働くことなどあり得なかった」と述べた。

米資産運用大手ブラックロック<BLK.N>のフィンク最高経営責任者(CEO)はロイターとのインタビューで、社内の調査部門の予算を増やすと述べた。

事情に詳しい関係者によると、ブラックロックはすでにこの数週間に銀行などに対して費用を負担しない調査リポートについては提供を止めるよう通告し、EUの新規則の条件を満たしたという。

さらにリチャード・バーンスタインに至っては、1年ほど前に証券会社の調査リポートの利用を全て打ち切り、外部への調査費用の支払いをなくした。調査の95%は自前だという。

銀行はEUの新規制導入前から株式調査部門を縮小していた。アルゴリズム取引の拡大、規制強化、指数連動型ファンドの人気の高まりなどが背景だ。

フロスト・コンサルティングによると、世界の主要証券会社の株式調査予算は2008年には82億ドルだったが、17年には34億ドルに減少した。マッケンジーはEUの新規制導入などで世界の大手10銀行の調査予算は近いうちにさらに30%減ると見込んでいる。

一方、資産運用会社がAIや機械学習などの分野で銘柄を物色するには、ハイテク分野に通じた専門家が欠かせない。また、資産運用会社が社内の調査部門を拡充するには従来型の金融専門家も必要だ。

このため銀行が調査部門の縮小を図る中、資産運用会社がこうした人材にとって魅力的な受け皿となっている。

(Trevor Hunnicutt記者)