国税最強部門、「資料調査課」(税務署では調査できない困難案件、例えば、悪質、海外、宗教事案などを扱う部署)出身であり、タックスヘイブンの実情を描いた『税金亡命』の著者でもある佐藤氏が、免税を利用した脱税行為について語る。

「免税」を利用した脱税行為とは?

前回は密輸による金塊脱税の話を書いた。

佐藤弘幸(さとう・ひろゆき)1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、同部統括国税実査官(情報担当)、電子商取引専門調査チーム、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。他の著作に「国税局資料調査課」(扶桑社)がある。国税局課税部資料調査課(機能別に派生して設置した統括国税実査官を含む)は、税務署では調査できない困難事案を取り扱う部署である。資料情報及び決算申告の各係数から調査事案を選定、実地調査する。税務署の一般調査と異なり、「クロ」をターゲットにしているので、証拠隠滅や関係者との虚偽通謀を回避する必要があり、原則として無予告で調査を行う。

 スキームは比較的単純だが、ともかく輸入しなければいけないので、税関監視のリスクだけでなく金塊そのものの盗難・紛失のリスクが伴う。

 昨年あたりから金塊密輸の摘発増加と関連ニュースの報道によって、税関当局の監視が厳しくなっているのは間違いない。空港内に貼られている密輸撲滅ポスターの数が証左といえよう。

 ところで、金塊脱税は密輸だけではない。

 中国の旧正月や国慶節になると、来日した中国人の爆買いがニュースになるようになって久しい。爆買いしている店は、いわゆる「Dutyfree」ショップである。消費税法の用語でいうと、「輸出物品販売場」(消費税法第8条)となり、諸要件を満たしたうえで所轄税務署長の許可を受ければ、非居住者に対して消費税を「免税」で商品販売することができる。

 銀座や秋葉原に行くと簡単に見られる光景だが、外国人観光客がパスポートをレジに出して商品を購入している場面に出くわす。輸出物品販売場で免税で売るためには、

(1)外国人観光客からパスポートの提示を受ける
(2)購入記録票の作成
(3)購入者誓約書の作成
(4)購入記録票を外国人観光客のパスポートに貼付
(5)購入者誓約書等を販売店で保存

 これらの手続きを踏む必要がある。これは、不正手段による免税販売を防止するための手続きといえる。外国人観光客は、日本出国の際、商品を外国に免税に持ち出す(母国に持って帰る)には、出国時にパスポートに貼付された購入記録票がないと消費税を徴税されることになっている。

 爆買いと金塊脱税のどこが関係するのか?そう、外国人観光客に「買ってもらったことにして」免税販売にするのである。免税で販売したことにすると、仕入にかかった消費税を確定申告で税額控除、つまり「不正還付」を受ける事ができるわけだ。