近い将来国土交通省は、i-Constructionの100%の導入を目指す。
大手、中堅・中小を問わず建設会社にとって残された時間は少ない。そこでi-Construction導入の背景と、それに取り組む先進企業を紹介する。

「給与が良い、休暇が取れる、希望が持てる」
新3Kの魅力ある建築現場の実現に

イエイリ・ラボ
家入龍太代表
京都大学大学院修士課程修了(土木工学専攻)。日経BP社で「ケンプラッツ」編集長などを務めた後、独立。建設ITジャーナリストとして情報発信する一方、官公庁や学会・教育機関などが主催するセミナー、講習会などで講演も行う。

 国土交通省は2018年度をi-Construction(アイコンストラクション)の「深化の年」と位置付け、推進経費として19億円の予算(17年度予算の約2・8倍)を確保した。建設現場のイノベーションを推進することが目的だ。

 国交省は08年から、建設事業の調査、設計、施工、監督・検査、維持管理という建設生産プロセスのうち、施工の部分に着目して、ICT(情報通信技術)を活用して高効率・高精度な施工を実現する「情報化施工(ICT施工)」を提唱してきた。

 その結果、トータルステーション(TS)を使った施工管理方法であるTS出来形管理は一般化されたが、それ以外の技術を現場へ導入するため15年度にi-Constructionという新しい目標を示し、16年から新基準が導入された。

 

 

公共投資額の減少と
人手不足の解消

 i-Constructionとは何か。イエイリ・ラボ代表の家入龍太氏によると「測量・ 設計、施工、管理に至る建設の全プロセスを情報化すること」であるという。製造業に導入されているCIM(コンピューター統合生産)の建設現場版と表現できるだろう。

 i-Constructionが導入された現場は、UAV(ドローン)などを用いて立体的な測量を行って3D測量データを収集し、それに基づいて設計・施工計画を立て、3D測量データをブルドーザーや油圧ショベルのようなICT建機にインプットして半自動で施工を行ったり出来形管理をし、さらに検査や管理まで行うようになる。

 国交省が導入を急ぐ背景には「建設業就業者の高齢化と建設投資額の減少にある」と家入氏は指摘する。「就業者の高齢化」グラフ(図表1)のように就業者数は1997年の685万人から15年の500万人へ185万人も減っており、特に「3K」職場を嫌う10代・20代の若年層に減少が目立つ。

 しかも今後10年で、50代・60代が高齢により離職して、業界の人手不足は深刻化する。建設投資額はピーク時(92年)の84兆円から55兆円(17年度見通し)へ減少(※)。しかも財政難を反映して政府投資額はここ数年、20兆円台前半で横ばい状態のため「老朽化したインフラの更新もままなりません」(家入氏)。そのため導入が急がれているわけだ。