佐賀県小城市の政工務店は「i-Construction」の積極導入により、生産性の向上と省力化を図った。その効果はすさまじく、工期は30%削減、65人の社員で同時に6現場を動かしている。同社の寺尾誠社長にICT導入の経緯と効果を聞いた。

 国土交通省は2016年度から建設現場の生産性向上に向けて、測量・設計から、施工、さらに管理に至る全プロセスを情報化する新基準i-Constructionの導入を宣言した。それより以前の08年から、情報化施工推進戦略の下で「情報化施工」が推進されてきた。情報化施工では建設機械は自分の位置と3D設計データを常に照合して、オペレーター操作支援をしたり自動制御などを行う。また、3D設計データの導入により、従来必要だった丁張りや作業中の測量、修正施工作業が大幅に削減される。

いち早い情報化施工により
土木技術の差別化を図る

政工務店 寺尾 誠 代表取締役社長

 08年当時、建設業界はバブル崩壊後の長い不況に苦しみ、「地方の建設業も価格競争にさらされていました。当社もこのまま手を打たずにいると会社の存続すら危うくなる状況でした」と政工務店の寺尾誠社長は振り返る。

 土木技術の面で他社との差別化を図りたい」。そう考えていたとき政工務店は、「建機の販売店から情報化施工の話を聞いたのです」(寺尾社長)。

「新しモノ好き」だという寺尾社長だが、当初は半信半疑だった。「GNSSで位置を決めるというけれど、1センチ単位の精度が求められる作業を、カーナビの精度でやるのはむちゃだろう。それに相当の導入コストがかかるので、大手企業向けの話だと受け止めていました」と語る。

 決め手はデモンストレーションだったという。

「半年間も通ってきた営業担当者(キャタピラー九州)が、デモンストレーションをやらせてくださいと言う。ちょうど元請けをしていた現場(吉野ヶ里メガソーラー発電の造成現場)があったので、バックホウのマシンガイダンス、ブルドーザーのマシンコントロール、TS出来形管理などの情報化施工のデモをやってもらいました。ブルの性能には驚いた。前進後退の操作をするだけで施工が終わってしまった。

 現場監督に精度を測らせると問題ないという。同乗していたオペレーターは、丁張りなしで正確な施工ができたし、排土板の操作をしないので楽という好印象だった。しかも造成工程1ヵ月を見込んでいたところを2週間で終わってしまったのです」

 他社との差別化を図る手段がここにあったのだ。

政工務店では、情報化施工システムを搭載した重機を19台保有している