青田買いはなくならない!
一括採用の限界が露呈

 現在、多くの企業は採用倍率を公表していないが、例えば『就職四季報 総合版 2016年版』(東洋経済新報社)によれば、上位3社の採用倍率は533~2750倍だった。こうした高倍率選考を何の後ろ盾もなく、合同説明会→エントリー→書類選考→数回の面接(筆記試験)と、一から始めて生き残っていくという手法は、非効率的と言わざるを得ない。

 そこで最も有効なのが、人のネットワークの活用である。 

 コネ入社は、れっきとした就活法だ。公務員でもない限り、法律的に裁かれることもない。厚生労働省が企業に対して、採用の際には「応募者の適性・能力のみを基準として採用選考を行うのが基本」と呼びかけてはいるが、現実として民間企業の「縁故採用」は普通に行われている。

 有望なコネを持っていない学生の場合でも、大学の人脈を活用した青田買いルートなら可能性がぐっと上がる。

「自分が行きたい企業に大学のOBが働いているのなら、現場の“生”の声を聞きに行きましょう。そうすれば企業理解がグンと深まりますし、そのまま内定につながることだってありえますからね。現に、ここ3年ぐらいのことですが、商社などでは、学生が大学の先輩に人事部長を紹介してもらい、何度か食事に行って暗黙の内々定が出ているなんて話もあるようです。商社だけでなく、主にメガベンチャーと呼ばれる規模の企業に、この傾向は見られます」(上田氏)

 経団連は、「採用広報の解禁は3月、選考の解禁は6月」と指針を示してはいるが、これには法的拘束力はない。また、こうした青田買いは、企業側にとってもメリットがある。

「自社で働いている人間の推薦ということなら信頼できますし、事前に先輩から実務についてレクチャーなどを受けていれば教育コストも削減できます。そもそも、選考期間だけでは応募者を評価しきれない以上、人事も一括採用という就活文化に疑問を抱き始めているようです」(上田氏)

 同様のことはインターンシップ制度にも言える。文部科学省の発表によれば、インターンシップに参加した学生の2割が、その企業から内定を得ている。

 さらにHR総研の調査では、インターン制度を導入する企業は、2017年卒は48%だったが、19年卒は63%に急増するとの見通しだ。やはり企業としても、入社後のミスマッチを避け、優秀な人材を早期に獲得したいのだろう。