工場街を「ちい散歩」気分で!?

 全長5.6km。まるで、路面電車のような雰囲気で、東京都大田区内を走る東急多摩川線(旧目蒲線・多摩川駅~蒲田駅間路線)。その全7駅のちょうど真ん中に位置するのが、下丸子駅だ。平日は近隣のキヤノン本社などに向かうサラリーマンや、地元住民が利用している。

大人の町工場見学ツアーに、台湾経由の中国進出。<br />モノづくり集積地・東京都大田区で垣間見た<br />未だつかみきれない日本産業界再生への糸口2012年2月4日・土曜日。「おおたオープンファクトリー」の基点となった東急多摩川線・下丸子駅前。  Photo by Kenji Momota

 だが、今年2月4日には、駅前ではいつもと違った光景が見られた。そこには、“おおたオープンファクトリー”主催者のしるしである、赤い帽子を被ったり赤い作業つなぎを着た人たち、そして白とオレンジ色でプリントされた“おおたオープンファクトリー”の案内地図を広げる人たちの姿が目立った。

 このイベントは、首都大学東京、横浜国立大学、東京大学の共同研究母体である“モノづくり観光研究会”と、大田区観光協会が協力して主催したものだ。「大田の技に会いに行こう!」をキャッチコピーに、日本有数の機械産業系モノづくり企業の集積地・大田区で、モノづくりの現場を一般公開したのだ。

大人の町工場見学ツアーに、台湾経由の中国進出。<br />モノづくり集積地・東京都大田区で垣間見た<br />未だつかみきれない日本産業界再生への糸口「おおたオープンファクトリー」実施風景。株式会社伊和起ゲージでボールベアリングの組み付け実演を見る参加者たち。
Photo by Kenji Momota

 こうしたイベントは同区史上、初である。工場や商品展示施設を公開した企業は20社20ヵ所で、そのなかで3つの形態の催しが同時進行した。第一は、ウェブサイト事前予約制の工場見学・体験ツアー。これは子ども向け、巡回地域限定など5種類のツアーで構成されている。第二に、本イベント参加工場のうち10ヵ所を“軒先オープン”と称して、午前10時~午後5時まで、事前予約なしでふらっと立ち寄っての見学を可能に。そして第三が、“定時オープン”。これは“軒先オープン”と一部併催され、1回30分間の公開時間指定型だ。「事前予約は予定数が埋まった。また当日参加者も多く、我々の想定以上の盛況だ」(主催関係者のひとり、横浜国立大学院生の奥田良太さん)という。

 筆者は同日、午前10時半~午後3時まで「軒先オープン」を廻った。その間に各工場内で会った参加者、または“モノづくり観光研究会”の各大学生・院生が引率するツアー参加者を見る限り、その多くが中高年だった。親子連れは珍しく、30代前後のカップルやネクタイ姿のサラリーマンコンビも時折見かけた。

 近年、テレビでは「ちい散歩」(テレビ朝日系列)、「ブラタモリ」(NHK)、そして「モヤモヤさまぁ~ず2」(テレビ東京系列)など、都市型街歩き番組が人気だ。そのため、各地方自治体や旅行代理店が街歩きツアーを催すことも多い。また、工場見学ツアーも人気で、首都圏向けの専門ガイドブックが発行されるほどだ。こうしたトレンドに、“おおたオープンファクトリー”は上手くハマったといえる。