「君子豹変」した野田首相
官僚が政治家を動かす国

 野田佳彦首相が、消費税率引き上げに向かって突っ走っている。前回総選挙時の民主党のマニフェスト(マニフェストが「公約」なのかどうかわからなくなってきたので、単に「マニフェスト」と表記する)の内容とも異なるし、野田氏の街頭演説の内容とも異なるが、もう止まらないようだ。

 いつから「君子」になったのか知らないが、「君子豹変」とまで口にしている。もはや恥も外聞もない。彼には、官僚が教えてくれた増税路線以外の政策オプションがないのだろう。

 田中直紀防衛相が、国会で袋だたきに合っている。沖縄防衛局長の選挙に関わる「講話」は問題だったし、田中氏があまりにも防衛問題について知らないことも問題だが、明らかに大臣の無能さを確認するために時間を費やすような国会審議は時間の無駄だ。

「閣僚のお仕置き部屋」のような、専用の別の委員会でも作って内輪でやって欲しいという気分になる。

 上記は冗談だが、田中防衛相もまた、何をするかも、どう答弁するかも、官僚に頼らざるを得ない裸の王様である点で、野田首相と一緒だ。大臣が政策を考えて官僚を動かしているのではなく、官僚が大臣にあれこれ振り付けしている様が見え見えだ。

 もちろん、大臣となる人物の能力には問題があろう。いかに民主主義の国で、誰もが国会議員にも大臣にもなることができるという原則があるとしても、ものには限度がある。もっとも、この限度は、とうの昔に自民党政権の頃から破られていた。

 集団としての官僚は、長年かけて、大臣になる政治家たちを無能力化してきた。大臣をはじめとして、政治家は官僚のお膳立てに乗ることが楽で好都合だし、そうしなければ体面が保てないことが多い。