営業部門の管理方法には、2つのやり方がある。営業成績に重点を置く「成果管理型」の管理システムと営業成績より売上げを獲得する方法を重視する「行動管理型」の管理システムである。もちろん、多くの企業の管理システムはこの両極のシステムを結ぶ線のいずれかに位置するわけだが、システムの整合性が失われている場合があり、それは当然、業績にも悪い影響を及ぼす。本稿では、まずシステムの整合性が失われた3つのパターンについて論じ、成果管理と行動管理のいずれを選択すべきか、そのポイントを解説する。

お客様が王様か 上司が王様か

 営業担当者のだれもが「お客様は王様である」と言うだろう。それが本音ならば、まことに結構な話である。さらに問い詰めれば、「上司が王様である」と言う者もいるかもしれない。これもけっして悪い話ではない。

エリン・アンダーソン
Erin Anderson
INSEADジョン H.ラウドン記念講座教授。国際経営論を担当。INSEADとペンシルバニア大学ウォートン・スクールの共同プログラム「リーディング・ザ・エフェクティブ・セールス・フォース」(Leading the Effective Sales Force)のディレクターも務めている。

ビンセント・オニェマー
Vincent Onyemah
ボストン大学スクール・オブ・マネジメント助教授。マーケティングを担当。

 問題なのは、営業担当者が「自分のボスがだれなのか」、きちんと把握できていない場合である。このような混乱は、営業チームの管理方法を定義するさまざまな方針と施策、すなわち営業部門の管理システムに矛盾が生じている兆候かもしれない。

 我々は、営業と営業部門について20年間にわたって研究してきた。その経験から申し上げれば、このような矛盾はまず間違いなく、営業活動に支障を来す。営業担当者がシステム内の矛盾を解消し、問題に対処しようと苦戦するうちに、事態は進行していく。最初は個人の問題だったものが、営業チーム全体に広がり、最終的には組織全体を苦しめるようになる。

 やがて、営業チームから優秀な人材が離れていき、離職率が急上昇する。我々が調査した、ヨーロッパの某多国籍企業では、5年連続で国内営業担当者の半数が職場を去っていった。さりとて苦境に立たされているわけではない。しかし、未解決の問題は山積していた。

 世界38カ国、50社で働く営業担当者2500人以上を対象に統計調査を実施したところ、営業担当者に顧客第一主義を奨励する管理システムと、地域統括責任者を最優先させる管理システムの間には大きな相違が認められた。しかも、それが問題視されていないケースが実に多いこともわかった。

 本稿ではまず、営業部門の管理システムに存在している対立がもたらす影響について解説する。そして各社の企業戦略や競争環境、組織能力、将来への展望にふさわしい管理システムを見分ける方法について説明してみたい。