三菱製紙、嫌がる王子に資本提携を応諾させた粘り腰の大金星経営再建中の三菱製紙に約100億円を投じる王子ホールディングスの矢嶋進社長(左)。ほくほく顔の三菱製紙の鈴木邦夫社長(右) Photo:JIJI

 過去18年間、自ら墓穴を掘り続けて経営が迷走した三菱製紙の鈴木邦夫社長が、まさかの高評価を得ている。

 2月6日、国内製紙最大手の王子ホールディングスは、実質的に経営再建中の三菱製紙に33%出資して持ち分法適用会社にする方針を発表した。王子HDは約100億円もの大金を投じて三菱製紙の筆頭株主になるも、議決権は3分の1未満に抑え、三菱ブランドは維持される。原材料の共同調達や、国内外の生産拠点の統廃合までを視野に入れた協働を進めていく。

 以前から、業界首位の王子HD(2018年3月期の連結売上高予想1兆5000億円)と、同6位の三菱製紙(同2010億円)は業務提携を進めてきた。

 最近では、16年3月に国内最大級のバイオマス発電所を共同運営する新会社(19年7月に稼働予定)を立ち上げ、17年6月にはティッシュペーパーなどの家庭紙事業で新会社(19年4月に稼働予定)を設立している。鈴木社長は、業務提携の既成事実を積み重ね、粘りに粘って資本提携の拡大に持ち込んだのである。

 すでに王子HDは、三菱製紙に対して2%出資しているが、今回さらに踏み込んだことで、出資比率を33%に引き上げることに成功した。王子HDという“後ろ盾”を得たことが、三菱製紙の“大金星”なのだ。

 社内に対して、鈴木社長は「現時点で、三菱製紙が取り得る最良の方策であると信じております」という主旨の長文のメッセージを発した。同社は、社長3代に亘(わた)って低迷を続けてきたが、ようやく一筋の光明(こうみょう)が差したことになる。