米国の自己啓発産業は現在、100億ドル規模に至る。ただし、書籍やTVで重宝されているアドバイスの多くが、誤解を招きがちであったり、間違っていたりするのも事実である。筆者らは、自己啓発の妨げになる4つの俗説を発見した。本記事では、真偽不明の神話に惑わされず、みずからを適切に導く方法が示される。


 自己啓発の方法に関するアドバイスは、至る所にある。米国で販売される書籍の約2.5%は、この種のアドバイスだ。これにスピーチや研修プログラム、TV番組、ウェブ商品、それにコーチングやヨガなどを加えれば、自己啓発は年間100億ドル規模の産業である。しかも、この数字は米国内だけのものだ。

 だが研究によれば、こうしてありがたがられているアドバイスの多くが、実は誤解を招きがちだったり、間違ったりしていることさえあるという。せいぜい半面の真理であることが、研究や実践によって明らかになっているにもかかわらず、パフォーマンス向上をもたらすとされる俗説のいくつかは、いまだ根強く信じられている。

 自己啓発書を購入する可能性が最も高いのは、過去1年半以内に啓発書を買ったことがある人だという調査結果も、これで説明がつくだろう。俗説満載の最初の本に効果がなかったので、もう1冊買うというわけだ。もしかすると近い将来、また別の1冊を買うかもしれない。

『ジャーナル・オブ・マネジメント』誌に最近掲載された報告書によれば、パフォーマンスに関する2万5000件近くの学術論文のうち、心理学でいうところの「個人内変動」、たとえばトップから平均、ワーストまでの個人のパフォーマンスのばらつきや変動幅について言及している記事は、ごく一部に過ぎない。「同じ測定基準を用いて、万人にわたってパフォーマンスを比較しうる」と、思い違いをしているアドバイスがあまりにも多い。おかしな話だ。

 パフォーマンス向上を目指す数百人を観察した結果、我々は、前述の報告書を大筋で確認した。そして、自己啓発を試みている際に妨げになる、一連の俗説を浮き彫りにした。

 以下は、心理学、スポーツ、アート、リーダーシップなど多様な分野における、一連の観察に基づいている。俗説の「神話」部分を明確にし、実態を説明し、そして適切なアドバイスを提供することが、より実効性のある自己啓発の助けになるだろう。