結論から言うと、外国法の下であっても、一定の形式に基づいて作成された遺言は有効になります。

 ただし、この場合、遺言の形式的要件が問題になります。日本で有効と認められるためには、(1)行為地法、(2)本国法、(3)住所地法、(4)常居所地法、(5)不動産の所在地法等のいずれかの法で適合することが必要です(遺言の方式の準拠法に関する法律第2条)。

 形式的には、外国法で作成された遺言が有効になる可能性はありそうですが、よほどの理由がない限り、日本の民法に基づいた遺言を作成したほうがよさそうです。例えばアメリカでは、日本の公正証書遺言の方式を満たす遺言形式は存在せず、WILL(アメリカ法に基づく自筆証書遺言)が主流になっています。

海外でも公正証書遺言は作れる

 また、あまり知られてはいませんが、日本人が海外で公正証書遺言を作成することもできます。外国に公証役場はありませんが、在外領事館の領事が公証人となることができるのです(民法984条)。

 ただし、領事による公正証書遺言は、日本で作成する公正証書遺言と形式が異なり、実際の相続手続きでは、金融機関窓口等での対応がスムーズにいかないことがあるかもしれません。

 ここまでの話をまとめると、外国法に基づいて書かれた遺言書は、一定の条件を満たせば、日本国内での相続手続きが可能になりますが、実際に日本で手続きを行う際には窓口で取り扱いを拒否されたり、手続きが滞ったりするなどのトラブルがしばしばあるので、注意が必要です。

「郷に入っては郷に従え(When in Rome, do as the Romans do.)」ということわざは世界各国にありますが、こと「遺言」に関しては、日本で相続手続きを行うことを考えると、日本の民法に則って作成したほうがよいのかもしれませんね。