大震災で引きこもった漫画家が7年目に語る「苦しみの正体」東日本大震災からまもなく7年が経つ。震災を機に引きこもり生活に入ったカトーコーキさんは、漫画を描くことで、本当に自分の心を苦しめていたものの正体に気づいたという

震災から7年、引きこもる人々は
その後どんな人生を歩んだか?

 東日本大震災からまもなく7年。筆者は震災後の被災地で、引きこもる人たちが地震の後、どのような行動をとったのかを調べてきた。
 
 津波が来るとわかっていても、家から逃げられずに流されて亡くなった人がいる一方で、津波に流されたものの、打ち上げられて生還した人もいる。また、家から逃げて避難所などでボランティアをしたり、仕事に就いたりした人もいれば、日常が戻るにつれてまた引きこもってしまった人もいた。

 これまでは日常生活ができていたのに、震災を機に引きこもってしまったケースもある。福島出身の漫画家で『しんさいニート』(イースト・プレス)の著者であるカトーコーキさん(37歳)も、その1人だ。

「今から考えれば、なるべくしてなっちゃったのかな、みたいな。もともと心の中に抱えていたものをやり過ごしてきた人が、震災や原発事故を食らって問題が露わになったのかなという気がするんです」

 幼少の頃、父親から精神的虐待を受け、自己否定感を持ったまま育ってしまい、苦しんだ。他人も自分も愛せない人間が震災に遭って、内面に抱えていたものが噴き出した。これまで自己を肯定できていたのかどうかが、その分かれ目になったのではないか。

 カトーさんは、そんな自分が問題として抱えていたものを漫画にしようと思った。震災が起きたとき、福島県南相馬市の古民家で陶器屋を開店していた。店がつぶれるのではないかと思えるくらい家がきしんだ。仕事中だったので、テレビもラジオも付けていなくて、津波が来ていることに気づかなかった。結果的に津波は来なかったものの、原発から30キロ圏内にあった。

 店を片付けていると、兄が家族と共に車でやって来た。6歳と3歳の姪もいた。