「唇の奇形」は治るのに、なぜ赤ちゃんは死んだのか写真はイメージです

先天性異常の赤ちゃんが餓死した
小児科医の「最悪の記憶」

 唇の先天性異常である「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」について、ある医師が書いたコラム記事が医療関係者の間で話題になっている。記事が公開されたのは昨年11月だが、グーグルなどの検索エンジンで検索すると、2018年2月22日現在でも上位にヒットする。

 それは、YOMIURI ONLINEのコラム・ヨミドクター(2017年11月2日)に、小児外科医の松永正訓氏が寄せた「口唇口蓋裂を受け入れられなかった家族」という記事だ。

「医師として関わってきた多くの子どもの中には、忘れられない子が何人もいます。その中で、最悪の記憶として残っている赤ちゃんがいます。(中略)障害児の受容は簡単ではないと言いましたが、それが「死」という形になった子がいました」

 コラムは、深い悔恨から始まる。

 その赤ちゃんは、「先天性食道閉鎖症」という先天性異常(奇形)を持って生まれてきた。食道閉鎖とは文字通り、食道が途中で閉じている状態だ。当然、母乳も何も一滴も飲めないため、生まれてすぐに手術をしなければならない。それは、赤ちゃんの小さな胸を切り開く、難易度の高い手術だ。

 松永医師はすぐに、赤ちゃんの家族に説明し、手術の承諾書をもらおうとした。ところが、家族は手術を拒否した。

 実は赤ちゃんには食道閉鎖以外にもう1つ、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)という先天性の奇形があった。