消費税率の引き上げにあたって、なくすべき既得権益の第2弾として、赤字法人への課税の問題を取り上げる。

なぜ7割以上の法人が
赤字なのか

 私は、外国人投資家に、日本の税制の話をする機会がたびたびあるが、その際日本の税制の問題点として必ず質問されるのが、赤字法人の問題である。

 わが国にはおよそ260万の法人があるが、そのうち71.5%(08年度)が赤字(税務会計上の欠損)である。資本金1億円未満に限ると、この割合は何と78.1%になる。さらに驚くべきことは、国税庁のサンプル調査によると、5期以上連続で赤字法人(欠損)の割合が半数を占めている。

 なぜこのように赤字法人(税務上)の数が多いのか、5年以上赤字でどうやって法人として生き延びているのか、もし税負担を逃れるためだけに赤字に出来る制度があるのであれば、それは改めるべきではないか、これが彼らの正直な疑問・感想であり、私も賛同する。

 実は、なぜこうも赤字法人が多いのか、その原因については、国税庁もさまざまなサンプル調査を行っているのだが、きちんとは解明されていない。しかし、カギを握るのが、「法人成り」と「2重控除」と言うコンセプトであることはほぼ定説化している。

2重の控除を
受けるための「法人成り」

「法人成り」というのは、個人事業形態で事業を行うより、法人形態で行った方が税負担が有利なことから、法人形態になることである。法人形態で事業を行った方が税金面で有利な理由は、税率の差異や家族への所得を分散するなどいろいろあるが、最たるものは、経費の「2重控除」である。