農業プラットフォームを
世界に先駆けて構築

 現在内閣府では、ITベンダーや農機メーカーなどと連携しながら、どの農家でも各種データを活用したエビデンスベースの農業を可能にするためのデータプラットフォームを、世界に先駆けて日本で構築する取り組みを続けています。

 このプラットフォーム構築のため、農業情報の標準化に関する取り組みも進められてきました。2014年には、政府のIT総合戦略の一環である「農業情報創成・流通促進戦略」の主要項目として、農業関連データの標準化や語彙の統一に関する取り組みを開始。この流れを受けて、昨年からスタートしたのがデータプラットフォームに関する取り組みです。

 国内の農業IT市場には、さまざまな企業が参入してきています。それぞれが独自のIT化を推進するのは、ベンダーロックにつながるため、個々の農家には得策ではありません。また、企業側にとっても、基礎となるデータを取得するためだけに多大なコストを要する構造となっている今の状況では、国際競争力を高めることは難しい状況です。気象、地図などのデータは、どの企業にとっても必要なものです。重要な点は、これらデータを活用して収量アップなどの付加価値を生み出すことで、データを単に閲覧することに多大なコストをかけるのは非効率だということです。

 世の中のオープン化の気運もあり、この状況を変えるために内閣府や農林水産省と協議を続け、農業データ連携プラットフォームを構築する構想を2017年3月に発表しました。同年6月には、クボタ、ヤンマー、井関農機、富士通、NEC、NTTグループ、JAなど、20を超える企業・団体と研究コンソーシアムを組み、すでに昨年末にはプロトタイプの稼動が始まりました。

 地図や気象などの基盤となるデータに関しては、無償の公的データに加え、民間企業が提供する有償のデータの利活用も可能となっています。2018年4月より、試行的にコンソーシアム参会外の企業へのプラットフォーム開放を予定しています。そして、2019年4月には、商業ベースの活用が始まる予定です。軌道に乗れば日本国内のさまざまな農業データが連携され、それを活用しながら、ベンチャー企業を含む多数の企業が参加し、多様なソリューションが生み出されていくことが期待されます。

 農業ほど気候などのビッグデータが有効活用できる分野はありません。また日本の農業は地域性、多様性があり、これらを踏まえた独自ソリューションも期待されるでしょう。これまでは属人的に行われていた農家と小売り、流通とのマッチングなどをエビデンスベースで提案するコンサルティングサービスも本格化するでしょう。プラットフォームの完成を機に日本の農業がドラスティックに変わり、全産業の中で最もイノベーティブな分野になることを期待しています。

 次回は、プラットフォーム構築や運営のポイントを含め、日本のIT農業が世界をリードする具体策を聞く。

(取材・文/須田昭久 撮影/加藤有紀)