内閣府が示した2つの財政シナリオ:
財政再建目標の実現性は低い

 内閣府は1月24日『経済財政の中期的試算』を発表した(図表1参照)。同試算では、

・成長戦略シナリオ…2011~2020年度の平均成長率は名目3%程度、実質2%程度
CPI変化率は2012年度にプラス、中長期的には2%近傍
・慎重シナリオ…2011~2020年度の平均成長率は名目1.5%程度、実質1%強
CPI変化率は2012年度にプラス、中長期的には1%近傍

 の2つのシナリオに基づく今後の財政状況が示されている。

 また、いずれのシナリオについても

・消費税率…2014年4月に8%へ、2015年10月に10%へ引き上げ
・復興対策…復旧・復興対策の実施、復興特別税の創設、復興債の発行

 が前提とされている。

 ここでの「成長戦略シナリオ」はかなり楽観的だ。しかし、その場合でも国と地方を合わせた公債残高のGDP比は2010年度の170%から2020年代前半に向けて180~190%のレンジ内に何とか収まるに過ぎない。より実現性の高い「慎重シナリオ」では同比率は2017年度に200%、2023年度には220%を超える。民主党は「国と地方の公債残高のGDP比を2021年度以降に安定的に低下させる」という財政再建目標を掲げている。今回の内閣府の試算は、消費税率を10%に引き上げたとしても、その目標の実現可能性が低いことを示すものといえる。

日本は「貯蓄の偏り」、欧州は「貯蓄の不足」<br />日欧財政問題の根本的な違い<br />――森田京平・バークレイズ・キャピタル証券 チーフエコノミスト