上司の口癖は「大丈夫か?」

 ウェブデザインを中心に事業を展開する企業のある部署で、最近、立て続けに若い社員が辞めていきました。40代の上司は、部下に対する気づかいは欠かさずにいたつもりだったので大変なショックを受けました。

 その上司の口癖は「大丈夫か?」でした。

 新しい指示を出すとき、途中報告を受けるとき、一緒に外出するとき、あるいはランチタイムや飲み会でも、「仕事、大丈夫か?」「体調、大丈夫か?」などとたびたび声をかけていました。

 その都度、部下は「大丈夫です!」と元気に答えました。だから、安心していたのです。

 しかし、上司から「大丈夫か?」と聞かれて「大丈夫ではない」と答える部下はほとんどいません。また、「大丈夫か?」という声かけ自体が非常に曖昧で、部下はそれに対して自分が理解できていないことや相談したいことをどう提起していいかわかりません。そのため、問題を1人で抱え込み失敗してしまうのです。

 それに対してお客様から叱られたり、上司が「大丈夫と言ったから任せたのに……」とがっかりした様子を見せたりすれば、傷ついた部下は心を閉ざすか、辞めてしまうことになります。

 この上司に、部下への愛情が欠けていたわけではありません。むしろ愛情豊かなほうだと言えます。でも、極論すればそんなものは必要ないのです。

 上司と部下の間で交わされるべきは、「大丈夫か?」「大丈夫です!」などという曖昧なやりとりではありません。結果を出すための具体的行動を上司が提示することと、部下によるその履行が必須です。

 職場においては、それさえできていれば充分なのです。