一流のビジネスパーソンでも「親の介護」には頭が真っ白になる

どうでしたか? あせった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これは、ビジネスパーソンが「介護」に直面する際の代表的な2つのストーリーであり、私が一般企業などで介護セミナーを行う際に、最初に取り組んでいただくワークです。

私は介護によって家族に手を挙げてしまうプロセスのすべてを断ち切ることをミッションに活動する「NPO法人となりのかいご」の代表をつとめています。
仕事柄、毎日のように介護の相談にのっています。実は、私のところに真っ青な顔で「どうしたらいいのでしょうか?」とご相談にいらっしゃる方をみると……、この2つのストーリーのどちらかから親の介護をスタートさせる方がほとんどなのです。

私がこういうワークをやるのは、なにもみなさんを脅したいからではありません。ドキッとしたり頭が真っ白になったり、「どうしたらいいのか?」と途方に暮れたりする。これは当然の反応です。
ポイントは、一流企業で毎日何百人もの部下を動かしているような立場の方であっても、自分の親の介護に直面すると冷静な判断ができなくなってしまうということ。急に倒れた親との向き合い方がわからず、1週間も放置してしまったという方が、現実にはいらっしゃいます。

だからこそ私のセミナーでは、まずは、いざという時のことを実際に考えてみることを大事にしています。正しい手順を書き込むことができたかどうかというよりも、自分の身に起きたこととして「介護」を具体的にイメージすることに意味があります。
いったん介護を”自分事”にしておくことで、この先の説明も、ご自身の状況に当てはめながら読むことができるでしょう。これは、インフルエンザの予防接種のようなもの。予防接種を受けたからといって100%感染しないわけではありませんが、受けておけば重症化を避けることにつながります。

そういうわけで、決まった正解があるわけではありませんが、それぞれのストーリーについて簡単にコメントしておきましょう。