救急車で運ばれる先の病院は選べない

ストーリー1のポイントは、病院は完全に病気を治して返してくれるわけではないということです。

半身麻痺になってしまうと(しかもそれが利き手だったりすると)、日常生活にいろいろな影響が出ます。だからといって病院は、完全に治るまで預かってくれるわけではありません。次の患者さんのためにベッドを空けなければいけないからです。言葉は少し悪いですが、家族からすれば、まだ治っていないのに追い出されてしまうことになります。

病院にいるソーシャルワーカーが転院先を手配してくれることもありますが、残念ながらそうではないところもあるし、ソーシャルワーカーの抱えている案件が多すぎて、手が回っていない病院もあります。

しかも、救急車で運ばれる先の病院は選ぶことができません。救急隊員は、本人の状態を確認してから受け入れ先の病院を探しますが、ベッドに空きがない、専門医がいない(特に夜間は)といった理由で断られることもめずらしくありません。行きつけの病院があっても、その病院に入院できるとは限らないのです。
ようやく見つかった受け入れ先に面倒見のいい敏腕ソーシャルワーカーがいるかどうかは、はっきり言って「運」です。

退院後どうするか、リハビリ専門の施設に転院するのか、いったん帰宅して病院に通うのか、介護認定を受けて必要なサービスを受けるのか……。こういったことは、家族のみなさんが中心になって決めていくしかありません。
自分で必要な情報を集めるという姿勢が求められます。ソーシャルワーカーが積極的に動いてくれる人でなくても、こちらから申し込めば相談の時間をとってくれるものです。

また、病院付きのソーシャルワーカーがいなかったり、あまり信頼できなかったりしても、みなさんには「地域包括支援センター」という心強い味方がいます。困ったらとにかくそこに電話しましょう。「地域包括支援センター (親が住んでいる)市区町村名」で検索すると、たいてい連絡先が見つかります。そこに状況を説明すれば、様々なアドバイスを受けることができます。