Rule2
世界のVIPが話す「シンプルな英語」

 ペラペラな英語を目指す必要はない。シンプルに「伝える」英語を身につけましょう。そうお伝えしました。では、「シンプルに伝える英語」とは具体的にどういうものか。いくつか例を見ていきましょう。
 まずは、カルロス・ゴーン氏の英語です。日産自動車および仏ルノーの会長を務め、私たち日本人にとって、グローバルに活躍するビジネスリーダーの代表といえる人物でしょう。
 ゴーン氏の英語は、フランス語アクセントが残り、あきらかに英語のネイティブスピーカーではないことがわかります。それでも同氏の英語は、切れ味が鋭く説得力にあふれています。そして、その伝え方はシンプルそのもの。まさに「シンプルに伝える英語」の良い例と言えるでしょう。

会場からの質問
How different are the corporate cultures at Nissan and Renault?
(日産とルノーの社風はどのくらい違いますか?)

ゴーン氏
I would say, between Nissan and Renault, the differences are very big. Very big.
(私の意見では、日産とルノーの違いは、極めて大きいです。極めて、大きい。)

I mean, there is absolutely no similarity between the two corporate cultures.
(つまり、この2社の社風には共通点がまったくありません。)

 上記のやりとりは、ゴーン氏が講演で日産とルノーの企業文化の違いを聞かれたときのものです。
ゴーン氏は、聞き手の質問が終わると同時に答えを提示します。その結論は「very big(極めて大きい)」です。さらに結論を明確にするために「very big(極めて大きい)」を繰り返します。そして、その結論をさらに別の表現で言い直します。それは、「no similarity(まったく共通点がない)」です。これであればゴーン氏の結論が何であるのか、どんな相手にもしっかりと伝わるでしょう。
 そして、その結論を支えるために根拠を示します。それぞれの会社の特徴を述べていくのです。ゴーン氏はこの受け答えのあとに「日産は~」「ルノーは~」という具体的な話を比較していきます。

簡単な英語でシンプルに表現する

 この表現の特徴は3つあります。

(1)結論が明確で、短く、わかりやすい
(2)論理が明確で、ストレート
(3)簡単でわかりやすい語彙

 結論は「very big」「no similarity」です。だらだらと表現せず、端的にわかりやすく表現しています。結論を支える根拠も、各社の事例を紹介しており明確です。さらに、similarityは、similar(「類似している」)の名詞形であり、頻出単語のひとつ。簡単な単語を使っています。
 やはり際立っているのは、質問が終わると同時に答えるほどの「明確な意見」を持っていることです。よって、中身に切れ味があります。
 ここでもし、日産の例、ルノーの例を表現する際に細部の説明に深入りしすぎると、知らない英単語に突き当たってしまい、口ごもってしまうでしょう。そして、結論にたどり着く前にだらだらと混迷してしまい、さらに自信がないものになっていきます。そして、何を伝えたいのかがわかりにくくなっていくでしょう。
 やはり、冒頭に、簡単な表現(very big)を持ってくると、説得力が増すばかりか、英語のコミュニケーションにも成功します。
 (1)結論の明確さ、(2)論理のストレートさ、(3)表現のわかりやすさ、これが「シンプルに伝える英語」のポイントです。

point 結論を明確にして、まず最初にハッキリと伝えよう