「退職後のセカンドライフを海外で過ごしたい」

 そんなライフスタイルが注目され始めたのは、団塊世代の大量定年がスタートした前年の2006年にさかのぼる。

 とりわけ、物価が安いアジアの国々で趣味三昧、悠々自適な暮らしを営む日本人退職者にスポットライトが当てられた。彼らの生活ぶりがマスコミで連日のように紹介されたことは、記憶に新しい。

 しかし、ここに来て、海外に長期滞在する人々の生活ぶりが急変しているという。その原因は、昨年後半に発生した世界的な金融危機により、世界中で為替が大変動を繰り返しているためだ。

 特に「金融危機の副産物」とも言える急激な円高は、海外在住者に大きな影響を与えている。金融危機の震源地である米国のドルが大量に売られ、投資家の資金が日本円へ逃避したため、ドルやユーロをはじめ、世界中の通貨に対して円はかつてない高騰ぶりを見せているのだ。

金融危機で急激な円高に
海外生活にも変化が到来

 ここに来て円安傾向に振れているものの、リーマン・ショックが起きた昨年9月と直近を比較した場合、円は米ドルに対して10%以上、ユーロに対して20%以上も上昇している。新興国通貨に対しても、同様だ。

 そのため、資産として保有している通貨の種類、滞在国、滞在形式の違いなどにより、海外在住者の生活は大きく明暗が分かれている。

 そもそも、日本人の海外滞在トレンドは、この数年間だけでも目まぐるしく変わっている。(財)ロングステイ財団が毎年発表する「希望滞在国調査」を見ると、そのトレンドの変遷がよくわかる(下の表参照)。

ロングステイ希望滞在国調査