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リーダーはデジタル変革の
“最初の一押し”をどう支援するか

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第78回】 2018年3月9日
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多岐にわたる変革が求められる

 デジタルイノベーションに向けて求められる企業内部の変革は多岐にわたる。とりわけ伝統的な大企業には長年培ってきた企業文化や事業における成功体験があるため、変革には大きなエネルギーを必要とする。従来の価値観との齟齬、自社事業とのカニバライゼーション、既存の資産やプロセスに対する拘りなど変革を阻害する要因は多数存在する(図2)

『リーダーシップ論』(ジョン・コッター著、ダイヤモンド社)によれば、変革を推進するには、「1. 危機感の熟成」「2. 変革チームの組成」「3. 変革ビジョンの策定」「4. ビジョンの浸透」「5. 従業員サポート」「6. クイックウィン」「7. 定着と変革」「8. カルチャー浸透」という8つのステップを踏むべきであると述べている。最初に必要となるのが経営者、現場部門などにおける改革に対する意識変革である。これは、コッターが示す変革の8ステップの「1. 危機意識の醸成」に該当する。

 組織に関する変革が必要な場合もある。イノベーション推進の専門組織を設置する、IT部門の役割を再定義する、事業部門の組織編成を変更するなどさまざまな選択肢が存在する。制度面では、インキュベーション制度、人事評価および報奨制度、副業・兼業や在宅勤務など働き方に関する規則、特許・知財の帰属に関するルール、スピンオフ制度、社内外からのアイデア公募制度など多岐にわたり、イノベーションを促進させる制度の採用とイノベーションを阻害する制度の緩和の両面における変革が求められる。

 権限についても、予算権限、稟議・承認プロセスにおける特例、外部との連携における自由度、既存組織を巻き込む権限など革新の足かせを取り払う措置が必要となろう。最も重要かつ難題となるのが人材に関する変革である。CDO(Chief Digital Officer)の登用、イノベーション人材の育成、中途採用、配置転換などさまざまな動きが見られる。

 しかし、イノベーションを推進する人材を育成するには時間がかかるし、外部から採用するのも困難な状況といえる。また、どんなに優秀な人材を社内外から集めたとしても、ここで述べた意識、制度、権限などの条件が整っていなければ成功はおぼつかない。これらの変革は、「変革の8ステップ」の「2. 変革チームの組成」から「8. カルチャー浸透」に該当する長い道のりといえる。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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