米国のAED大手と
独占的販売提携を結ぶ

 その一環で前述のグループ横断プロジェクトが結成され、他社との連携協議も進められてきた。そして、昨年7月には米国の救命救急医療機器メーカー大手であるゾール・メディカル社と同社製AED「ZOLL AED Plus」に関する日本国内独占的販売提携契約を締結し、救命救急医療の分野への本格進出を果たした。

「旭化成グループが目指す“これからの医療”で、重要課題の一つに掲げるのが、救命救急医療の高度化です。米国におけるAEDのリーディングカンパニーで、製品の卓越した性能や品質が医療機関や軍から高評価されるゾール・メディカル社は、われわれにとってベストパートナーだと判断しました」

 ゾール・メディカル社との関係強化のため、旭化成はアドミス社を傘下に収めた。国内で医療機器製造販売の承認・認証申請業務を手がける同社は、かねてからゾール・メディカル社の製品を取り扱っていたからだ。旭化成がここまで信頼を置くほど、ゾール・メディカル社のAEDには優位性があるという。

「一般にAEDを使用する現場では、戸惑いや過度の緊張から、いくら講習を受けていても使いこなすことは大変だといわれます。その点、ゾール・メディカル社のAEDには改良されたパッズ構造やわかりやすいガイダンス機能があり、ごく一般的な人が使う場面でも使いやすさを発揮し、安心して、使用されることが期待されます」

医療の領域を新たな
グループの牽引役に!

 単なる製品販売のみならず、旭化成側からも日本やアジア市場向け仕様などに関する提案を行い、共同開発の体制づくりを目指すという。一方、第2弾、第3弾のゾール・メディカル社製品投入も計画している模様だ。

「救える命を着実に救っていく救命救急医療は当社グループの企業理念と非常にマッチしていますし、医療経済上、今後もこの領域は重要性が高まるはず。加えて、救命救急は医療機器が最も活躍できる領域です」

 現時点での日本における心肺停止患者の救命率は、満足できるものではない。心肺蘇生をサポートするゾール・メディカル社のAED普及は、救命率向上に寄与できるものと期待できよう。しかもそれは、旭化成グループの強力な成長ドライバーとなる。

「既存の医薬・医療機器事業の売り上げがグループ全体に占める割合は、まだ10%に届かないのが実情。既存事業強化と新規事業拡大で、全体の4分の1程度に及ぶスケール(5000億円規模)まで高める可能性を探っていきます」