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『一からはじめる禅』監修者が語る、禅への誘い

【第52回】 2009年4月3日
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一からはじめる禅
『一からはじめる禅』星野和子[著]安永 祖堂[監修]定価1680円(税込)

 仏教各派の本山が多く存在する京都には、付随する僧侶養成機関として発足した由来を持つ学校が多い。私が現在勤務している禅宗系の私立大学もそのうちの一校だ。ただし、以前の私は、国際禅堂と称する外国人向けの坐禅会で指導を担当していた。

 外国人である彼らが禅に惹かれる理由はさまざまである。日本文化を学ぶという目的で来日している留学生は、文化の一つとして禅をとらえている。空手や茶道を学んでいる外国人は、精神的なものを求めて坐禅に取り組む。キリスト教の信仰を深めるために、瞑想としての坐禅を研究するというケースだって珍しくない。

 しかし、もっとも興味深かったのは、演劇関係の人たちが禅に魅力を感じる理由であった。俳優志望の若者とか、演出家、振付師などが一生懸命に坐禅に励むのである。その動機を尋ねた時に彼らが教えてくれたのが、「メソッド」という、イメージ・トレーニングのような演技訓練メニューだった。実はそれが坐禅と似ているというのだ。

 「メソッド」をご存知だろうか。「メソッド」とは、もともとロシアの演出家兼俳優のスタニスラフスキー(本名は、コンスタンティン・セルゲイ・アレクセフ。1863―1938)が創出した一種の演技理論であるという。それを実践的なシステムに発展させたのが、オーストリア出身の演劇教師兼俳優のリー&アン・ストラスバーグ夫妻だそうだ。

 「メソッド」をわかりやすく説明すればこうなるだろうか。あなたが舞台俳優であり、ある作品の中で酒場の主人の役を得たとしよう。言うまでもなく一番大切なのは、登場人物に自己同化することだ。そのためにはまず、あなたがあなたであることを捨て去らなければならない。まったく別の人間になるのだから。

 ではどうすればよいか。たとえば長椅子にゆったりと横たわって、自分の記憶の中の手がかり、幼いときに見た父親の古い革靴などをイメージとして思い浮かべながら、少しずつ人生をさかのぼっていくのだという。そして子供の頃の自分に戻り、ついには母胎の中にまで戻ってしまう。あなたは母親の子宮の中で胎児としてゆったりと羊水にたゆたっている。その段階を「リラクゼーション」と呼ぶのだという。

 さてその次には、胎内から再び誕生して、成長を重ね、酒場の主人としての人生を作り上げていく。酔客たちのさまざまな人間模様を見てきた男というようなイメージを重ねていきながら、役作りに励まなければならない。まったく別の人格を形成しながら時間を逆にたどってくることになる。これを「コンセントレーション」と称する。

 要するに、ただ配役として与えられた人物像を真似るのでなく、役柄の内的「真実」を共感する能力を養わなければ、すぐれた俳優にはなれないというものらしい。

 NHK・BSで不定期に放映されている、「アクターズ・スタジオ・インタビュー」という番組がある。アクターズ・スタジオはニューヨークにある映画制作養成学校で、過去にロバート・デ・ニーロやアル・パチーノなど数々の大スターや高名な監督を輩出している。そのアクターズ・スタジオが、今が旬の俳優や監督を招いてインタビューするという番組だ。

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