他部署との交渉にひるまない!経理には「独自ネタ」がある

他部署に気を遣う経理
経費精算の代筆や、私的な雑用をする人も

 今や職種を問わずコミュニケーション能力は必要不可欠ですが、デスクワークが多く、営業職などと比べて顧客対応やプレゼンテーションの機会が少ない経理部員は、どちらかといえば人と接する行為に対し苦手意識を持つ人が少なくないようです。

 しかしながら、経理部は関連部署から多種多様な伝票類やデータが行き来する部署です。扱われる書類は決して無機質な数値ではなく、収益を上げるための営業の結果であったり、社員の職場環境を良好にするための設備費であったり、社員の活動から生じた成果が表れいるものだと捉えられます。

 こうした成果の記録に毎日向き合っている経理部員は、各部署の使命を理解しながら適切な費用・投資が行われているのか精査し、良策をアドバイスする場面もあります。その中でコミュニケーション能力は欠くことのできないスキルでしょう。

 実際に、他部署とのコミュニケーションはどのようにしているのか、経理部員に聞いてみました。

 製造卸販売業の経理のAさん(30代女性)は、「各部署とは良好な関係性を保たないと、仕事がやり辛くなります。たとえば、予算科目の違いを指摘したり、精算書類の締切日をお願いしたりする時にはキツイ表現にならないよう、話し方に気をつけています」と笑顔を見せながら語ります。彼女の柔らかな表情から、優しい人柄も垣間見られるような気がします。

 Aさんからはとても自然な気配りを感じましたが、経理部員の中には必要以上にコミュニケーションに気を遣っている人もいるのです。というのも、経理部は傍から“キツイ”“怖い”といった印象を持たれやすいため、多くの経理部員はこうした印象の払拭を心掛けています。

 中には営業部、製造部といった直接部門を気遣い、「間接部門は直接部門を支援することも仕事の一つ」とのモットーで経費精算書の代筆を買って出たり、社員の確定申告のアドバイス(税理士以外の他人がやると違法)など、私的な雑用を引き受けたりして、相手との良好な関係性を築こうとする人もいるようです。

 ただ、これは「やりすぎ」なのではないかと思います。コミュニケーションの捉え方は様々ですが、言葉や行動を通じて相手を理解したり、メッセージを発信したりすることが本質です。つまり、片方のみが無理にへつらい、相手側のご機嫌を取るような行為とはかけ離れているはずです。

 Aさんのように話し方がキツくならないような気配りは、見習うべきところですが、書類の代筆や私用を引き受けるのは、対等な関係とは言えません。経理部は間接部門ですが、収益やコスト削減に繋がるような改善策を図ることが使命の一つであり、こうした仕事を遂行するには、各部署と良好なコミュニケーションを取りながら、経理部の使命を理解してもらい、他部署から協力を得るのは欠かせないことです。では、どのような言葉、振る舞いがコミュニケーションの本質に沿ったものなのでしょうか?