バロッサのレジェンド、ジョン・デュヴァルさん。長年、グランジを造り続けた男だ

「アルチザンズ・オヴ・バロッサ」での試飲で席に着くと、目の前にいたのは誰あろう、バロッサのレジェンド、ジョン・デュヴァルさん。ペンフォールズの前チーフワインメーカーとして1986年から2002年まで17ヴィンテージの「グランジ」を造り、白ワイン版グランジである「ヤッターナ」を生み出した人物である。

 ペンフォールズを離れたジョンさんは、オーストラリア国内ばかりか国外のワイナリーのコンサルタントをしつつ、2003年から個人的にワインの醸造も行っている。

 彼が手がけた「エリゴ・シラーズ」の2010年を味わうと、バロッサらしい筋肉質のボディながらグランジのような猛々しさは影を潜め、ペンフォールズに喩えるならむしろ、当初試験的に造り始めた「RWT」のようなエレガンスが感じられる。ああ、この人はもともとこうしたスタイルのワインが造りたかったのかと、思わず膝を叩いてしまった。

セント・ハレットのオールドブロック・シラーズは平均樹齢90年。11カ所の畑から

 バロッサ・ヴァレーは基本的に暑く乾燥した産地なので、白ブドウを植えるなら冷涼なエデン・ヴァレーという暗黙の了解があったが、今後はその認識を改めなくてはならないかもしれない。 

 というのも、温暖な産地に適した白ブドウを植えればよいからだ。現在、シュナン・ブランの畑はバロッサ・ヴァレーにふたつしかないそうだが、最近は南アフリカのシュナン・ブランが見直されているように、温暖な気候のもとでも持ち前の高い酸を残す白品種として有望視されている。

暑く乾燥したバロッサ・ヴァレーにも、適した白品種はある。これはクレーレット

「シュワルツ・ワイン」のシュナン・ブランはハニーテイストとピュアな酸味が共存したなかなかの出来。もうひとつの品種はクレーレット。ローヌ南部やラングドックの白ワインで重要な役割を果たすこの品種も、温暖で乾燥したバロッサ・ヴァレーには向いている。

「スピニフェックス」のクレーレットは凝縮感にあふれ、マルメロとハチミツの香りが芳しい。味わいには締まりがあり、もったり感は皆無。