今、多くの企業が「働き方」を模索している。コワーキングやテレワークなど働く場所はオフィスだけに限らない時代。未来のワークプレイスはどこにあるのかを探った。

業態やサービスに合わせて
意図を持ったオフィスづくりが必要になる

コクヨ
クリエイティブセンター 主幹研究員
「WORKSIGHT」編集長
山下正太郎氏

次世代ワークプレイスの研究、コンサルティングに従事。2016~17年、英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート ヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザイン客員研究員。これまで30カ国、50都市以上のオフィスを訪れている。

 「働き方改革」が浸透する中、今オフィスの変革が始まっている。「一昔前、企業は競争力を上げるために工場に投資しました。そこで効率が改善され、価値に結び付く時代があったのです。現在は、プロダクトやサービスの企画そのもので勝負する時代で、ナレッジやイノベーションを生み出すオフィスへの投資が重視される時代になっています」

 そう説明するのは、国内外の最先端オフィス事情に詳しい、コクヨ クリエイティブセンター主幹研究員の山下正太郎氏だ。

 その山下氏によれば、今世界のオフィス潮流のキーワードは「アクティビティー・ベースド・ワーキング(ABW)」。ワーカー自身が時間と場所を選定できる働き方のことだ。

 それを体現したのが、山下氏がリテンション型と呼ぶ、ABWの概念をより反映したオフィスだ。オフィスは単なる選択肢の一つ、家でも図書館でもどこでもが働き場所になる。社内のフリーアドレスなどはその一形態だ。センターオフィスはソーシャルなハブとしての機能が求められる。

 もう一つは、新しい価値を生み出すイノベーション型のオフィス。ワーカー同士がコミュニケーションしやすいよう、カフェなどのライフスペース機能を充実、近接性を大切にするオフィスだ。

 そうした構図の中、グローバル企業で目立つのは、ワーカーに対して豊かな体験や刺激を与えるため、都市の中のオフィスを希求していること。「オフィスに人を集めるのではなく、面白い人が集まっている所にオフィスを造ればいい、という発想です」。例えば米国の世界的な製造メーカーは、企業城下町を捨てて、それまで縁のなかった大都市の街中に本社を移した。そこには世界レベルの大学があり、優秀な研究者が集まっていて、日常的に接点を持てるからだ。

 いうなればオフィスの在り方は、それぞれの企業の戦略に基づいて決まるといえる。

 「専門性が細分化されつつある現在、今後は業態やサービスに合わせて、意図を持ったオフィスづくりが必要になります。そこで重要なのは、ワーカー自身の意識改革。サッカー場を造って人を放り込んでも、ルールを知らなければサッカーになりません。オフィスの変革では、新しい働き方を学ぶチェンジマネジメントも必要です」

 と語る山下氏。成熟した市場で勝ち残るには、働く場所と意識の変革が鍵になる。