「なぜこんな優秀な人がこんな選択を!?」と驚くこともありますが、考えてみれば、日本の学校教育では家計管理について学ぶ機会はほとんどありません。

ですから、社会人としてはとても優秀なのに、家計のこととなるとからっきし……そんな人は決して少なくないのかもしれません。

日本人は「自分で選ぶ」のがとても苦手……

と、偉そうに語ってみたものの、何を隠そう、じつは私も家計のことでと~っても苦労してきた一人です。
日本の大学(ドイツ語学科)を卒業してからNTTに就職した私は、外資系のIT企業に転職して以来、マーケティング戦略やアナリスト業務に携わってきました。
アメリカにやってきたのは2000年。研究職をしている夫が、バージニア州の大学に転職したのがきっかけです。

アメリカに引っ越した当初、壁として立ちはだかったのが「お金」でした。使う通貨が円からドルに変わることくらいは知っていましたが、知らないシステムやルールがたくさんあったうえに、お金に関して“決めること”があまりにも多かったため、ほんとうに驚いてしまったのです。

夫が大学で働きはじめると、すぐに福利厚生関連の書類が人事部からドッサリと届きました。たとえば、年金1つとっても、「確定拠出プランは大学と契約している3つの運用会社から選んでください」「運用会社を選んだら、その会社が提供している投資信託からいくつかを選んでください」「投資信託を選んだら、それぞれの配分比率を決めてください」という具合に、選択肢が次々と現れます。

これだけでもチンプンカンプンなのに、「健康保険の会社は?」「保険プランは?」「その他の福利厚生プランは?」「月々の源泉徴収額の比率は?」……と、決めることが山のようにあるのです。

転職したての夫は本業に忙殺されていましたから、これらの膨大な手続きは、妻の私がやることになりました。言わずもがなですが、資料はすべて英語。しかも、提出期限は数週間後に控えていましたから、さあ大変です。

誰かに助けを求めようにも、日本語でわかりやすく説明してくれる保険屋さんや会計士さんが、バージニア州の小さな町にいるはずもありません。自分だけでは決めかねることもたくさんあり、「忙しいのはわかるけど、ちょっとは相談に乗ってよ!」などと夫と交渉(平たく言えばケンカ)を重ねることも数知れず……。
ワクワクしながらアメリカに移住したのに、いきなり大ピンチを迎えました。

とはいえ、いつまでも文句を言っているわけにはいきません。ある日、私は腹をくくりました。これらの家計管理の仕事を、「厄介な一時的雑用」ではなく、「自分の継続的ミッション」だと捉え直したのです。そして、私はこう宣言しました。

「今日からわが家のCFOになります!」