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歴史的な円高傾向の“転換期”は本当に始まったのか?
貿易収支大幅赤字と米国経済回復に募る期待の信憑性

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第215回】 2012年2月28日
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貿易収支の大幅赤字と米国の回復期待
歴史的な円高の転換期は訪れるか

 日銀による追加緩和策の実施もあり、足もとの為替市場で円高傾向に歯止めがかかりつつあるようだ。ドル・円の為替レートを見ても、1ドル=80円の壁を越えた後、今のところすぐに円高方向に動き出す気配はない。

 また、ユーロ・円のレートにしても、2月23日現在、1ユーロ=106円台とユーロが強含みの展開になっている。こうした市場動向もあり、市場関係者の中には、「2012年は、円高傾向が転換点を迎える可能性が高まった」と指摘する人たちも出ている。

 円高傾向に歯止めがかかりつつある背景には、わが国の貿易収支が大幅な赤字になっていることや、米国経済の回復期待が高まっていることなどある。確かに、今まで黒字を稼ぎ続けてきたわが国の貿易収支が、マイナスになったことの意味は大きい。中長期的に見ると、為替市場で円が弱含みの材料となる可能性が高い。

 今後、貿易収支の赤字が定着し、所得収支を含めた経常収支の黒字幅の減少傾向が続くようだと、為替市場の需給状況からも円安傾向が定着する可能性はある。

 一方、現在は小康状態を保っているユーロ圏の信用不安問題は、本質的な解決策が見つかったわけではない。むしろ、今後ギリシャやポルトガルなどの債務問題が顕在化する可能性は高いと見るべきだ。

 また、回復期待が高まっている米国経済についても、ユーロ圏問題の展開によっては、再び懸念が発生するリスクは残っている。

 それらの要素を考えると、現時点において為替市場で円安傾向が完全に定着したと判断するのはやや尚早だ。ただし、現在のわが国のエネルギー事情などが続くと、経常収支の大幅な黒字トレンドは変わらざるを得ない。ということは、円高傾向の風向きは少しずつ変わりつつあると見るべきだろう。

 足もとで円高傾向に歯止めをかけるきっかけとなったのは、日銀の追加緩和策の実施だった。日銀が、予想外に10兆円規模の資産買入れ枠の増額を実施することを発表したインパクトは大きかった。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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