強制捜査でとん挫したライブドアによるボーダフォン買収

熊谷  結局、検察もこうした堀江さんの態度にムカツイたんでしょうね。堀江さんの第一の信奉者と言われていた私を、堀江さんが逮捕された1ヶ月後に追加で逮捕したわけです。逮捕状が読み上げられ、手錠をかけられ、カメラのフラッシュを浴びながら東京拘置所に車で入り、身体検査を受け、名前が番号に変わり、独房に入れられた瞬間と、そのニオイは、今でも鮮明に覚えています。
  すごく無念で悔しかったけれども、同時に肩の荷はおりました。強制捜査以降、寝る時間もほとんどなく、社内の通常業務への対応、メディア対応、東証対応、弁護士対応、特捜部対応など、体力と精神の限界すれすれまで働き続けましたからね。睡眠不足だったので独房では毎日爆睡していました(笑)。

藤沢  僕もずいぶん長いこと激務で有名な業界で社畜をしてますから、その気持ちはなんとなくわかります。それから東証は、3月13日にはライブドアの上場廃止を決定しましたね。

熊谷  上場廃止は独房のラジオで知りました。「あ~、やっぱり」という感じで聞き流しましたけど、強制捜査前にボーダフォン買収のための資金調達の準備をしていたので、ボーダフォン買収がソフトバンクに決定したニュースをラジオで聞いたときは悔しかったです。

藤沢  孫さんに取られちゃったんですね。

「株が紙くずになる!」勘違いした投資家たち

熊谷  ライブドアの上場廃止は、それこそ感情というかメディアが作り出した雰囲気で「理由はどうでもいい。とにかく上場廃止にしろ!」となり、東証も世論の雰囲気に流され、実態を調査しないままに上場廃止に向かったわけです。オリンパスの時は、まず、有価証券報告書の訂正報告書を提出させ、東証が独自に検討し、上場維持を決め、その後に特捜部が関係者の逮捕という流れでしたが、ライブドアの時は、突然、特捜部が強制捜査に入り、会計資料を根こそぎ押収したわけです。訂正報告書にしても会計資料がないため作成できないし、東証も調査することもできない。だから、東証は、ライブドア側の主張を全く聞かずに、東京地検特捜部の発表を鵜呑みにし、世論の空気に流され上場廃止にしたわけです。
   ライブドアと同時に上場廃止になったライブドア・マーケティングという会社があったんですが、あの上場廃止なんてひどいもんですよ。決算が黒字ですからね。ライブドアの粉飾決算の影響で、当期純利益1億4900万円から、1億4700万円に200万円減っただけです。けれでも、上場廃止となると多くの一般投資家はパニックになり、みな一目散に株を売ろうとしました。

藤沢 700円近くで取り引きされていたライブドア株は、強制捜査で100円ぐらいまで一気に暴落しました。そして、2006年3月13日に東証が1ヵ月後に上場廃止にすることを発表すると、そこからさらに30円も下落しました。ファンダメンタルズを無視して株をトレードしている人たちは、上場廃止になると、株の価値がゼロになると勘違いしている人も多いですね。

熊谷  そもそも多くの人は、株価がどうやって形成されるのかとか、上場の意味とか、全然わかってないんじゃないですかね。わかってないのにヒステリーに騒ぐから話がややこしくなる。