藤沢  それはそのとおりですね。実際に、僕自身が、外資系の証券会社に就職する前は、そんなこと全くわかっていませんでした(笑)。時価総額が何かも知らなかったけど、とりあえず外資系投資銀行が流行りだったし、一番給料がよかったので入ったんですけど、入社してから、上司の指示が全く理解できなくて、だんだん上司の顔色が変わっていって、これやばいなぁとか思って、必死にいろいろ勉強して、その勢いで勉強したことについてブログに書いていたら、ダイヤモンドさんが本を書いてみないかと誘ってくれて『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』の出版に至ったんですよ。おかげ様でロングセラーになって、つい最近も増刷されて9刷まで行きました。

熊谷  さりげなく、自分の本の宣伝ですね。わかります。

「株」と「上場」をカンタンに説明すれば…

藤沢  そもそも、「株」が何かわかっていない人が多いですね。会社というのは、何かお金を儲けるためのプロジェクトをみんなで行うための法的な器なわけです。そして、そのプロジェクトに最初にタネ銭を渡した人がいる。この時に、会社は出資してもらった金額に応じて「株」を渡す。「株」というのは、会社の所有権の証書のことで、基本的に会社が将来稼ぐ利益はこの証書を持っている株主のものです。この株は、最初の出資者の手元をはなれ、自由に売買できるようになり、市場に流通するわけです。

熊谷  上場というのは、その「株」というものを、証券会社にさえ口座を作れば、誰もが自由に取り引きできるように証券取引所に登録することです。また、上場すると、会社は株式市場で新たに「株」を発行して不特定多数の個人投資家から資金を調達することもできます。もちろん、上場しなくても資金の調達はできますが、やはり上場していた方が資金調達はやりやすいですね。投資家から見ると、上場している「株」はいつでも換金できるので、やはりこの流動性の分、価値が高まるとも考えられます。

藤沢  上場された「株」は誰もが自由に売買できるわけですから、会社の状態を表す財務諸表に偽りがないことが重要になってきます。よって上場企業は決算書などの提出に関して、より厳しい規制を受けます。具体的にいうと、有価証券報告書といって、これに偽りがあると非常に重い罪を問われます。粉飾決算というのは、有価証券報告書を意図的に誤魔化すことです。それにしても株式会社や株式市場というのが、人々の欲望を燃料に社会を進歩させるドライビング・フォースを生み出していく、資本主義経済のエンジンなんですよね。

熊谷  将来金持ちになりたい起業家が次々と現れ、そういった起業家に投資する金持ちがたくさんいるというのは、経済成長にとって実に健全なのに、ライブドアの時はマネーゲームと言われ、我々にも反省すべきところはありましたが、あのような形で潰されてしまいました。ライブドアの経営陣は、中流家庭以下の者の寄せ集めでした。日本を支配している老人達にコネがなくとも、育った家庭環境によらずとも、努力と知恵させあれば若くても成功できる、金持ちになれるという成功事例だったはずなんですけどね。
  にもかかわらず、メディアが堀江さんの富ばかりを強調した結果、世間では自由な市場経済が格差を広げるといった論調まで出てきてしまいました。そして、あの逮捕劇ですよ。結果、今の日本の閉塞感です。