「非集中」スイッチが脳を成長させる

 私がクライアントや患者の方々に「非集中」というアイデアを紹介すると、とっさにちょっとした反発を受けることが多い。非集中と聞くと、努力レベルを下げたり、目的もなくふらふらしたりすることをイメージするからだ。

 彼らは下手の横好きにはなりたくない。自分の手で何かを創造したり、問題を解決したりしたいと思っている。私が本書のキーワードである「いじくり回す(Tinker)」「かじる(Dabble)」「落書きする(Doodle)」「やってみる(Try)」という言葉を口にしたとたん、だいたい似たり寄ったりの反応が返ってくる。いじくり回すだけでは何も完成しない。かじるということは真剣に取り組まないということでは?落書きなんて子どものお遊び。確かに、やってみることが重要だと子どもには教えるけど、大人の社会では成功しないと意味がない……。

 確かに、「非集中」という単語はネガティブに聞こえる。でも、意味の問題はひとまず置いておいて、懐中電灯の比喩に戻ろう。「集中」と「非集中」を懐中電灯の2種類のスイッチと考えてほしい。「集中」は目の前の道を照らし出す狭くて細い光。「非集中」は遠くまで届いてあたりを広く照らし出す光。どちらの光も単体では使い道に限界がある。しかし、ふたつをうまく使い分ければ、電池が長持ちするうえ、暗闇でもずっと効率的に道が探せるのだ