どんな企業でもすぐに売上1億円を達成できる=「すぐイチ」の法則とは?!
全国の中小企業800社以上が絶賛!約6年で53期となる人気の「No.1ビジネスモデル塾」を主宰している著者が、この塾で教えている内容をわかりやすく、ストーリー+解説にまとめて1冊にしました。それが『すぐに1億円 小さな会社のビジネスモデル超入門』です。
今回はこの新刊の発売を記念して、本の中から抜粋、再構成をして紹介します。第1話は女性が経営している「漢方サロン」。売上が減る中、どのように危機から抜け出すのでしょうか?

(前回まではこちら)

「漢方・整体サロン」を2店舗経営している藤堂華恵。売上がなかなか増えずに、資金繰りも苦しいため、知り合いから凄腕コンサルタント・遠山桜子を紹介してもらう。その桜子が提案したあることをきっかけに業績は急回復するのだった。

お客様を育てる「顧客の家族化」

いったい、なんでこんなに次々とアイディアが出てくるのだろうか。華恵の頭の中を、様々な疑問がかけめぐる。
「大切なのは、お客様と長く付き合うこと。お客様を育てて、親密な関係を築いていくこと。言うなれば『顧客の家族化』ということです(→解説)
そして、それを行うのにここが重要なんですけど、顧客リストを活用するのです」

「それなら今も作っています!」
「もちろん存じ上げています。でも、今のレベルじゃ不十分です。住所や名前など単なる情報だけのリストにするのではなく、顧客一人ひとりの属性や悩みも書き込むようにしてください」

属性や悩み……ですか?さすがにそこまでは把握していませんでした」
「的を射たサービスを実現するには、そうした情報は欠かせませんよ。それをスタッフ間で共有するだけでお客様との距離がぐっと近くなります」
「確かにリピーターの方とはいろいろなお話をするから自然とたくさんの情報をもらっています。いつもは全体会議の時にみんなで共有するようにしていたんですが、リスト化してしまえばいろいろなことに活用できますね」
華恵は必死にメモをとる。
「このビジネスモデルを築くことができれば、経営は安定していくはずです」

「ありがとうございます、桜子さん。でも、私まだ不安がたくさんあるんです」
華恵が上目遣いで見ると、桜子はふふっと笑った。
「Hanaのコンサルは、もう終わり。華恵さんは一人でも大丈夫ですから」
「え……」
華恵は一瞬迷ったあとで、まっすぐに桜子を見た。

「……わかりました。まだまだ不安なことはありますが、桜子さんがそう言ってくださるなら、とにかく自分でがんばってみます」
「売上3億円の壁を突破したら、その時にあらためて話しましょう。すぐに達成できるはずですよ、きっと」
「はい。あ、ところで、うちのコンサルをしてくださった費用って、猿渡さんが支払われているんでしょうか?」
華恵はおそるおそる尋ねた。

「いいえ、まだですよ」
その言葉にホッと胸をなでおろす。
「じゃあ、今回かかった費用は自分でお支払いします。いいですか?」
桜子は返事の代わりににっこりと笑った。

「私、実はちょっと心配だったんです。だって、確かにあの人は経営者としては素晴らしいけれど、あなたに対しての下心が見え見えだったから」
「桜子さん……!私、もう大丈夫です。誰かに頼らなくても、Hanaと、スタッフを支えてみせます!」
桜子はふふっと小さく笑うと、
「とにかく、さっき話したところまでしっかり整ったら、フランチャイズで全国展開することも夢じゃないと思いますよ、華恵さん」
「フランチャイズですか!?そこまで考えていませんでした」
桜子は右手を差し出した。
「いえ、あなたならきっとできるわ。卒業おめでとう。でも、ここからが本当の勝負。がんばってくださいね」
華恵は声にならない喜びを精一杯両手に込めて、差し出された右手を力強く握り返した。

(完)