家電製品に代表されるように、製品のコモディティ化(汎用品化)は加速し、ハードウェア自体に付加価値がなくなりつつあります。最先端技術は瞬く間に陳腐化し、製品価格は新発売と同時に価格下落が始まります。おまけに、少子高齢化で市場のパイ自体が急激に縮小しています。

 そんな厳しい環境で、なんとか会社に利益をもたらそうと日々、売り込みをかける営業マンに、何が有効な“武器”となるのでしょうか。気合い?根性?それとも価格?

 電気機器を取り扱うある商社では営業部隊が集まり、難問解決に向けた答えを見つけようと議論をしています。果たして、答えは出るのでしょうか。覗いてみることにしましょう。

「競合に勝つためには価格を見直さない限り
絶対に勝てませんよ!」は本当か?

 「競合他社はどんどん価格攻勢に出てきています。もちろん新規開拓目標に向けて、日々時間を見つけては新規訪問しています。しかし、どの会社の担当者も決まって、『それでオタクで買うといくらにしてもらえるの?』という話になってしまい、そこから先に話が進みません。ウチの会社も、競合他社に勝つためには価格を見直さない限り、絶対に勝てませんよ!」

 千葉エリアを担当する営業所長からこんな意見が上がってきました。

 この会社は法人向け電器機器を取り扱っている商社で、リフォーム会社や工務店、あるいは大型商業施設を所有する企業を主要顧客に持つ会社です。リーマンショック以降、なかなか回復しない日本の経済環境の影響で、ずるずると業績を落としていました。

 業界内は、限られた需要のなかでシェアを奪い合う戦いになっており、価格競争に耐えられる企業が生き残るという体力勝負の様相が鮮明になってきていました。

 冒頭の営業所長の発言は、経営幹部に体力勝負の実態を伝えなければならないという、悲痛の叫びだったのかも知れません。会議には他エリアの営業所長も集まっています。

 千葉営業所長の発言を受けて、営業本部長は口を開きました。

 「千葉営業所長から上がっている意見に対して何か別の意見はありますか?」

 しかし、殆どの所長が押し黙り、「いや、確かにその通り」といった雰囲気を醸し出しています。

 「横浜エリアも同じような感じでしょうか?」

 営業本部長は少し空気を変えようと、いつも前向きな意見を述べる横浜営業所長に発言を促してみました。